日本経団連タイムス No.2945 (2009年4月2日)

九州経済懇談会を福岡で開催

−地域経済活性化へ意見交換



あいさつする御手洗会長

日本経団連(御手洗冨士夫会長)と九州経済連合会(九経連、鎌田迪貞会長)は3月19日、福岡市内のホテルで第61回九州経済懇談会を開催した。懇談会には、日本経団連から御手洗会長をはじめ副会長、評議員会副議長らが、九経連からは鎌田会長をはじめ会員約170名が参加、「九州の活力を引き出し、未曽有の危機を飛躍の好機に」をテーマに意見を交換した。

開会あいさつした九経連の鎌田会長は、九州経済について、自動車や半導体をはじめ主力産業が大きく落ち込み、九州全体の産業活力が損なわれつつあるとの認識を示し、中長期的な視野で、九州の強みを活かした地域経済の活性化を図ることが必要と指摘。自動車や半導体、環境・エネルギー、農業、観光などの分野における九州産業界の新たな取組み、アジアとの交流促進や社会基盤整備のための取組みなどを説明した。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、日本経済が直面している危機的な状況に対応するべく、9日、「即効性のある需要創出策」「雇用のセーフティネットの拡充と労働移動の円滑化」「企業の資金調達・資金繰りの円滑化」の3つのポイントを軸とする「経済危機からの脱却に向けた緊急提言」を取りまとめ、与党・政府に対し、直ちに来年度補正予算の編成に取りかかり、大規模な経済対策をスピーディーに実施するよう働きかけたことを説明した。

■ 活動報告

第1部の活動報告では日本経団連側から、森田富治郎副会長が「当面の経済運営」、大橋洋治副会長が「雇用の安定・創出に向けた取組み」、三村明夫副会長が「地球温暖化と環境問題への取組み」などについて報告した。

一方、九経連側からは、まず松尾新吾副会長が九州経済の現状と課題を説明。外需依存度の高い九州経済は、世界的な景気後退の影響が大きく、非常に厳しいとの認識を示した。その上で、九州経済を活性化するためには、(1)重要インフラの整備推進・前倒し(2)内需主導経済への転換(3)全国の2割を占める農業の質的転換――などが必要と述べた。

次に大野芳雄副会長が道州制の実現に向けた取組みを報告。まず九州7県の知事と経済団体で構成する九州地域戦略会議の「道州制の九州モデル」に関して、(1)道州制のメリットを12の分野別に例示し具体的に示した(2)徹底した分権型の道州制を提言した(3)国と地方の役割分担に見合う税財政制度のシミュレーションを行った――と説明した。その上で、道州制の実現に向けたより具体的な議論を進めていくための課題として、(1)地方分権改革の着実な実施(2)小規模な基礎自治体の行政能力の強化(3)税財政制度の見直し――などを挙げた。

続いて、藤井康雄副会長は九州一体となった温暖化対策について報告。環境ベンチャー企業と環境製品・サービス利用者のマッチングを図る「環境ビジネス交流会」の成果を紹介した。また、九州地域戦略会議の下に、温暖化抑制のための「意見・情報交換会」を設置、(1)九州域内企業の環境製品・技術・サービスなどのビジネス拡大(2)企業・住民を含めた普及啓発活動の展開(3)国内クレジット制度の検討――などを行っていると説明した。

道州制や観光など

■ 意見交換

第2部の意見交換では九経連側から、(1)イノベーションの創出には、研究開発拠点を核に地域の大学、企業等が技術課題を共有し、横断的に連携することが必要(2)力強い農林水産業へと転換していくためには、他産業からの新規参入を促進するとともに、農商工連携による食の安心安全の確保や高付加価値化の推進が重要(3)道州制導入には住民の自治意識の向上と市町村の行政能力の強化が不可欠(4)観光振興のためには、各地域間を結ぶ循環型の高速交通体系の整備やアジア各都市との交通ネットワークを構築する空港・港湾などの機能強化が重要(5)九州では「環黄海経済圏の形成」に取り組んできたが、アジアとの連携を図る上でEPAは非常に有効――などの意見があった。

これに対し日本経団連側が、(1)地域を核としたわが国産業競争力の強化のためには、科学技術予算や研究開発税制の拡充はもとより、高度理工系人材の育成、知財政策、ベンチャー育成等の一体的推進が必要(原良也評議員会副議長)(2)農業や関連産業の競争力強化を図る上で、農商工連携制度の拡充が必要。農商工連携の促進がフードアイランド九州の潜在力の最大限の発揮につながる(三村副会長)(3)財源や権限に加え、人材を「国から道州へ」「道州から基礎自治体へ」と大胆に移管することで、基礎自治体の行財政能力を強化することが必要(池田弘一評議員会副議長)(4)地域がそれぞれの観光資源を磨き上げ、国内観光を活性化することが肝要。九州観光推進機構を中心とした取組みにより、九州が北東アジア観光ゾーンの拠点となることに期待(佃和夫副会長)(5)保護主義に陥ることなく、自由貿易を堅持する姿勢が必要。特に、世界の成長センターである東アジア地域の発展につながるような自由度の高い包括的な地域協定が不可欠(渡文明副会長)――と発言した。

◇◇◇

懇談に先立ち日本経団連首脳は、液晶・半導体製造工場において不可欠な「クリーン垂直搬送装置」で国内外8割のシェアを獲得している第一施設工業(本社=福岡県新宮町)を視察した。

【総務本部総務担当】
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