日本経団連タイムス No.2945 (2009年4月2日)

「日伯貿易投資促進合同委員会」第1回会合の状況聴く

−経産省審議官らから/日本ブラジル経済委員会


日本経団連は3月17日、都内で日本ブラジル経済委員会(槍田松瑩委員長)を開催した。同委員会では、2月19、20の両日、ブラジリアで開催された「日伯貿易投資促進合同委員会」の第1回会合の模様について、日本側共同委員長を務めた石毛博行経済産業省経済産業審議官と赤星康米州課長から説明を聴いた。石毛審議官、赤星課長の説明概要は、次のとおり。

世界的な経済環境変化の中で、わが国は新興途上国に重点を置いた通商政策に取り組もうと考えている。2009年のGDP成長率見通しは、先進国が軒並みマイナスとなる中、新興途上国はプラスを維持している。ブラジルのように輸出依存度が低く内需が大きい国では、輸出が大きく落ち込んでもそれなりの耐久力を持っている。

ブラジルの魅力として「安定して成長する良質な市場」と「豊富な資源を持つ国」の2つが挙げられる。これまでどちらかといえば後者が注目されてきたが、われわれは今後、安定して成長する市場としての側面を重視して経済関係強化に取り組みたい。両国の経済関係をみると、貿易ではブラジルから日本への輸入61億ドル、同輸出68億ドルである。既に約300社が進出しており、投資は2000年代に入ってから、年平均6億6000万ドルの増加をみせている。

最近の課題の第1は、電気・電子産業の協力であり、半導体分野の技術者受け入れを進めていることである。ブラジルが日本のデジタルテレビ方式を採用したことを端緒に始めたものであり、自国だけでは不十分であるとの考えから、これを日伯方式としてアルゼンチン、ペルー、チリに広めようと働きかけている。第2に、リオデジャネイロ・サンパウロ高速鉄道計画である。ブラジルの閣僚が新幹線に乗り、その性能を高く評価するなど手応えを感じている。第3に、バイオエタノール分野での技術協力など4つの共同事業を行うことに合意したことである。第4に、ブラジルの資源会社ヴァーレと国際協力銀行(JBIC)、日本貿易保険(NEXI)が、また国営石油会社ペトロブラスとNEXIがそれぞれ覚書を締結して資源開発関連プロジェクトにおいて金融面での協力を行う計画を進めていることである。

こうした中で、両国の経済関係のさらなる拡大のため、昨年7月に日本、ブラジル両国は日伯貿易投資促進合同委員会の設置を決め、先般第1回会合を開催した。1日目には4つのワーキング・グループ(WG)に分かれて議論を行い、2日目に本会合を開催した。

貿易投資促進WGでは、例えば公務員や中小企業政策、知財関係の人材育成、ブラジルへの投資促進のためのマニュアル作成、食肉の輸出、医療市場、遺伝子組み換え作物(GMO)、遺伝子食品検査、日本がアジアで行ってきた生産統合の経験などに関する情報提供など、多岐にわたる分野で、主にブラジル側から協力が要請された。また、サービス貿易の促進やフランチャイズへの相互参入の提案があった。また、鉄鉱石運搬用貨物鉄道へのJBICによる融資やNEXIとブラジル国立経済社会開発銀行(BNDES)の協力に関する覚書締結の経緯をWGで報告し、翌日の本会合後に署名を行った。

ビジネス円滑化WGでは、ブラジル側から日本のブラジル人学校や日系ブラジル人が抱える問題が提起された。一方、日本側からブラジル日本商工会議所が日本企業を対象として実施したアンケート調査の結果を踏まえ、貿易手続きの簡素化、就労ビザ問題、輸出入企業の登録手続きの迅速化、中古資本財の輸入規制の問題を提起した。また、税制関連では、複雑な税制の簡素化、持ち株会社経由の投資に対する軽減税率の適用、連結決算制度の導入、あらゆる貸付に課される0.38%の金融取引税の廃止を要望した。

度量衡WGでは、産業技術総合研究所とブラジルの国家標準認証機関(INMETRO)で音響、測定へのIT導入、ナノ計量などの研究テーマについて議論し、今後こうした分野の協力を包括的に実施するための覚書作成に向けた意見交換を行った。

知的財産権WGでは、相互協力について、ブラジル知的財産庁(INPI)からの研修生の日本への受け入れ、ブラジルからのミッションの受け入れ、特許審査マニュアルの作成などの要請があり、推進に合意した。模倣品対策では、ブラジル側の取り組みが説明され、今後とも問題の解決に向けて協力していくこととなった。日本側からは、ロイヤリティー送金に関して、現状のINPIが内容の審査までを行う特異な制度を撤廃または簡素化するよう要望し、問題の解決に向けて話し合いを継続することとなった。

第1回委員会は、お互いの関心事項を俎上に載せ、問題の所在を明らかにし、制度の背景を再確認するよい機会になった。今後解決を図っていくことで合意したことから、第2回以降は重点項目に絞って、対応策を議論したい。

また、中期的な課題としては、投資協定(BIT)や経済連携協定(EPA)を取り上げる可能性もある。ブラジル側の要望で第2回委員会は今年10月に東京で開催する予定である。

協力に向けた先方の意欲は想像以上であり、この機会を活用して、ロイヤリティー送金の問題をはじめ、個々の問題を解決していきたい。新たに取り組むべき重点課題があれば経済界から提案してほしい。

【国際第二本部中南米・中東・アフリカ担当】
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