日本経団連タイムス No.2946 (2009年4月9日)

二階経済産業相と懇談

−日本経団連、緊急経済対策や住宅対策など7項目で意見述べる



発言する二階経済産業相

日本経団連(御手洗冨士夫会長)は2日、都内で二階俊博経済産業大臣、高市早苗副大臣、吉川貴盛副大臣、松村祥史大臣政務官、谷合正明大臣政務官をはじめ経済産業省幹部と、当面の景気対策、成長力強化、地球温暖化問題など、わが国経済が直面している政策課題について、意見交換を行った。

冒頭、御手洗会長は、「わが国経済は、これまで経験したことがない危機的な状況に陥っている」と指摘した上で、「こうした状況から一日も早く脱出し、安定的な経済成長を実現することが国民全体の願いである。政府で検討が進められている追加経済対策や中長期的な成長戦略の取りまとめに、経済界の考えを反映していただきたい」と述べた。

これに対して、二階大臣は、「4月10日ごろまでに、政府・与党で追加経済対策の基本的な方針を取りまとめる予定であり、本日は経済界と意見交換できる貴重な機会だと考えている」と述べた。

続いて、日本経団連側から、(1)緊急経済対策(2)住宅対策(3)成長力強化(4)地球温暖化問題(5)通商政策・国際協力(6)雇用維持・安定(7)コーポレートガバナンス――の7項目について意見を述べた。

第1に、森田富治郎副会長からは、即効性のある需要創出策や企業金融の安定化に向けた緊急経済対策として、環境対応自動車への買い替えに対する補助金制度の創設、省エネ型家電への買い替え促進や地デジ対応機器の普及支援、高速道路網等のインフラ整備の前倒し、日本政策投資銀行による民間企業への融資・出資枠の拡大などを求めるとともに、国民の将来不安を解消し、消費を持続的に拡大させるという観点から、社会保障制度の機能強化と少子化対策の抜本的拡充などを要望した。

第2に、住宅対策について、渡文明副会長は、「経済波及効果の大きい住宅投資は、内需の柱としての役割が期待されている。需要の創出につながる優良な住宅ストックの拡大を今まさに加速させていくべきである」と述べた上で、省エネ住宅、省エネ機器に対する補助制度の創設や拡充、旧耐震建物の建て替えへの補助、長期優良住宅に対する投資税額控除の拡充、住宅取得に関する贈与税の非課税枠の拡大を求めた。

第3に、成長力の強化について、榊原定征副会長は、「日本版ニューディールの実行を通じて、新たな雇用の創出と中長期的な成長力強化を同時に実現していく必要がある」と述べた上で、科学技術予算の抜本的拡充と研究開発税制のさらなる拡充を求めた。また、古川一夫副会長から、グリーンIT化の推進に向けて、産学官連携を一層強化すべきとの発言があった。

第4に、地球環境問題への対応について、三村明夫副会長は、「ポスト京都議定書におけるわが国の中期目標は、今後10年、20年にわたる日本の経済社会の行方を左右しかねない大変重要なテーマである」と指摘した上で、「中期目標を設定するにあたり、実施可能な削減策の積み上げに基づく設定、削減負担の国際的公平性の確保、削減負担に関する国民への十分な情報開示と国民的合意の3点に留意すべき」と述べた。

第5に、通商政策・国際協力について、大橋洋治副会長はまず、保護主義の回避にはWTOドーハラウンドの早期妥結に勝る方策はないと指摘した。また、新興国・途上国への資金供給と有効需要の拡大については、世界の成長センターである東アジア地域に対して、ODA等を通じたインフラ整備や社会セーフティネットの構築支援を行う必要があると述べた。

第6に、雇用維持・安定について、鈴木正一郎評議員会副議長は、3月の「政労使合意」に盛り込まれた雇用調整助成金のさらなる拡充、就職困難者に対する一般財源による職業訓練中の生活保障の実現、「ふるさと雇用再生特別交付金」への労使の協力などの施策の早期実現を要望した。

第7に、コーポレートガバナンスについて、経済法規委員会の萩原敏孝共同委員長は、「コーポレートガバナンスを議論する際、それぞれの企業が事業活動を展開する国の文化、制度商慣習等を踏まえることが不可欠である。また、各企業が自主的に選択することこそが競争力の源泉となっている」と述べた上で、「わが国企業の競争力を高め、企業価値の向上を図るためにも、その仕組みについて、一律的、形式的なルールを設けるべきではない」と言及した。

最後に、これらの要望に対し、二階大臣からは、「経団連と経済産業省の考え方に大きな違いはなく、各項目について、真摯に受け止めたい」との発言があった。

【経済第一本部経済政策担当】
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