日本経団連タイムス No.2948 (2009年4月23日)

東アジアの成長戦略に関する政府首脳との懇談会を開催

−麻生首相らと意見交わす


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は8日、都内で東アジアの成長戦略に関する日本政府首脳との懇談会を開催した。懇談会には、政府側から麻生太郎総理大臣、二階俊博経済産業大臣、伊藤信太郎外務副大臣らが、日本経団連側からは、御手洗会長はじめ、三村明夫副会長、渡文明副会長、槍田松瑩副会長らが出席した。

開会あいさつで御手洗会長は、世界的な金融・経済危機が各国の実体経済に影響を及ぼす中、日本経団連では、日本国内のみならず、とりわけ東アジア地域の有効需要をいかに創造するかという観点から鋭意検討を進めてきたと述べ、その一環として提言「官民連携を梃子に国際協力の戦略的・機動的な展開を求める」4月16日号既報)を取りまとめたことを紹介した。その上で、「麻生総理はじめ閣僚の皆さまには、この提言の要望事項も十分勘案の上、週末(12日)の東アジアサミットにおいて国際的なリーダーシップを発揮していただきたい(注)。本日は東アジアの成長戦略をめぐり、日本のODAのあり方や、東アジア版OECDと呼ばれるERIA(東アジア・アセアン経済研究センター)の活用戦略などについて懇談させていただきたい」と述べた。

■ 麻生首相

次いで麻生首相があいさつし、世界各国の経済成長が停滞ないしはマイナスに転じる中で、成長センターであるアジアの経済成長のボトルネックを解消していく必要があると指摘。こうした問題意識から、前週のG20ロンドンサミットでは、信用収縮への対応のため総額220億ドルの追加的貿易金融支援に加え、アジア各国の取り組みを支援するための最大2兆円の対アジアODA供与を表明したと述べた。

また、日本の最大の強みは「21世紀の成長センター」であるアジアに位置していることであり、「東アジアサミットでは日本とアジアが一緒になって、アジアの成長力強化と内需拡大を進めることの重要性を訴えたい」との考えを示した。

さらにアジアの成長戦略の事例として、インドのデリー・ムンバイ間の鉄道建設を挙げ、日本の関連技術の有用性に言及した。

最後に麻生首相は、アジアとの共益という認識の下、長期的に取り組んでいくことによって、日本は世界同時不況から脱していくだろうと述べた。

■ 二階経産相

二階経産相は、昨年6月に設立されたERIAについて言及。日本として、ASEAN、日本、中国、韓国、インド、豪州、ニュージーランドの16カ国により構成されるERIAを通じて、新しいアジアをつくる構想の実現に尽力したいと説明した。

また、ERIAを構想した2年半前の東アジア16カ国は、人口が31億人、GDPが11兆ドルであったが、現在はそれぞれ32億人、12兆ドルに増加しており、アジアが成長センターとしての原動力を内蔵していることは疑いないと述べた。

デリー・ムンバイ間産業大動脈構想については、東アジアサミットで、日本が大きな期待・関心を抱いていることを内外に示していくことが必要であると指摘。「プロジェクト総額900億ドルのうち700億ドルは、民間投資を活用して整備する計画である」と述べ、プロジェクトを推進する上での民間投資の重要性を強調した。

また、東アジアにおける標準化に関して日本がアジアをリードしていくことの重要性も指摘し、「標準化の取り組みは、日本がアジアと手を携えていくチャンスである」との認識を示した。

■ 伊藤外務副大臣

さらに、伊藤外務副大臣は、わが国の東アジアの成長戦略は「アジアの成長力を強化し、その活力を日本の成長につなげるもの」であると説明。アジアは世界で最も大きな潜在力を有しており、世界の「開かれた成長センター」として、現下の世界経済・金融危機をいち早く克服し、世界経済の発展に貢献することが期待されていると述べた。その上で具体的なアジアの成長力の例として、第一に、東アジアサミットの参加国だけで人口32億人を抱え、世界全体の約半分を占めていること、第二に、近年、アジア各国が欧米諸国を大幅に上回る経済成長を遂げていること、第三に、1人当たりGDPが、東アジアは世界の平均以下であるため、大きな成長余力と可能性があり、今後中間層の増加により、アジア地域全体の購買力の飛躍的な向上が期待されていることの3点を挙げた。

その一方でアジア経済の現状は、各国の輸出依存度が概して高いため、世界経済の減速により、輸出の減少、消費の減退などの大きな影響が生じていると指摘。こうした中、わが国がとるべき方策は、第一に、金融危機に各国と協力して的確に対応すること、第二に、アジア自身の成長力強化と内需拡大のための取り組みを推進していくこと、第三に、持続的な経済成長の実現のため、アジアのボトルネックを軽減、解消していくことであると述べた。

このほか、アジアの成長力強化のためには、公的資金のみならず、民間の技術・資金を動員することが不可欠であることや、エネルギー安全保障を確保し、持続的成長の阻害要因である地球温暖化等の環境問題に対応する必要があることから、わが国産業界の優れた省エネ・環境技術が、アジアの今後の成長に必要とされていることを指摘した。

最後に、現下の経済・金融危機を克服するためには、各国政府間の協力とともに、政府と民間の協力が不可欠であることを強調した。

(注)その後、タイの政情不安により、東アジアサミットほかASEAN関連会合はすべて中止となった。
【国際第二本部国際協力担当】
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