日本経団連タイムス No.2949 (2009年4月30日)

新型インフルエンザ・対策マニュアル

−作成実務セミナー開催/日本経団連事業サービス


日本経団連事業サービスは16日、新型インフルエンザに対する企業各社の対策整備を支援するため、日本経団連と連携して「新型インフルエンザ・対策マニュアル作成実務セミナー」を開催。企業の担当責任者など約180名が参加した。

新型インフルエンザ対策に関するセミナーについては、昨年10月に一度開催しているが、今年2月に政府の「新型インフルエンザ対策行動計画」が全面的に改定され、「新型インフルエンザ対策ガイドライン」が新たに策定されたことを受け、今回のセミナーでは、各企業・事業所におけるより具体的な行動計画や対策マニュアルの作成の支援を目的に、(1)日本経団連の政策提言と政府の方針・取り組み(2)企業事例紹介(2社)(3)対策マニュアル作成方法の解説――の3部構成で開催した。

最初の日本経団連の提言と政府の方針については、日本経団連が昨年6月に公表した「新型インフルエンザ対策に関する提言」、および政府の「新型インフルエンザ対策行動計画」と「同ガイドライン」の各概要を、日本経団連の今井克一経済第三本部長が説明した。

次の企業事例については、新日本石油とNECの各責任者から、両社の新型インフルエンザ対策について、それぞれ紹介が行われた。

はじめに事例発表を行った新日本石油総務部危機管理グループマネージャーの塩川正教氏は、行動計画・BCPの策定にあたっては、従業員の安全確保を最優先に、社会機能維持者として新型インフルエンザ発生時でも継続すべき必須業務・優先業務を特定して対策を講じていること、サプライチェーンに携わる事業者や他業界との連携・情報共有が重要になっていることなどを紹介した。

続いて事例発表を行ったNEC事業支援部勤労マネージャーの福地丈晴氏は、パンデミック自体の阻止は困難ではあるものの、感染予防対策の実施によりピークを下げ、時期を遅らせることは可能で、それにより被害の低減、医療体制の維持、ワクチン製造の時間確保を図ることができると説明し、社会全体を考慮した発想が重要であると指摘。その上で、NECにおける従業員等への感染拡大防止策を発生段階ごとに紹介した。

第3の対策マニュアル作成方法については、はじめにインターリスク総研研究開発部長・主席コンサルタントの本田茂樹氏が政府のガイドラインを踏まえ、求められる視点を包括的に解説した。

本田氏は、感染防止、事業継続等の観点から、(1)情報収集は通常時から行うこと(2)必要な資器材は未発生期に備蓄完了すること(3)感染防止策は経営者、従業員、家族全員の行動変容が重要であること(4)発生時は不要不急の事業は可能な限り縮小すること(5)「やること」と「やらないこと」を決めること――など対策マニュアル作成のさまざまなポイントを指摘した。

本田氏の講演に引き続き、日本能率協会コンサルティング・チーフコンサルタントの長崎昇氏が、実際に策定した行動計画やマニュアルが十分かどうかのチェックポイントについて、具体的な事例を交えて解説を行った。

長崎氏は、対策体制の確立、従業員感染防止対策の立案、従業員の教育・訓練、事業継続方針の設定、重要業務の特定、発生段階別の行動計画の策定など、対策マニュアルの必要項目を提示し、各社における対策レベル確認のためのチェックリストを紹介した。

その後行われた質疑応答では、対策の前提となる被害想定の考え方、発生時の取引先との契約問題等、参加者から各講師にさまざまな質問が寄せられた。

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日本経団連事業サービスでは、今後も新型インフルエンザに関する企業各社の対策整備を推進すべく、適宜、情報提供・啓発活動を継続していく予定である。

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