日本経団連タイムス No.2952 (2009年5月28日)

「宇宙基本計画に関する意見」発表

−基本的方針等を提示/個別のプロジェクトについても


政府基本計画案へのパブリックコメント

日本経団連の宇宙開発利用推進委員会企画部会(栗原昇部会長)および宇宙利用部会(西村知典部会長)は、政府の宇宙開発戦略本部が策定中の宇宙基本計画(案)に対するパブリックコメントとして、18日に「宇宙基本計画に関する意見」を提出した。今後は、26日に開催される政府の宇宙開発戦略本部専門調査会の議論などを経て、6月初旬を目途に基本計画が本部決定される予定である。

宇宙基本計画は、昨年5月に成立した宇宙基本法に基づいて策定される初めての計画であり、研究開発だけでなく、ユーザーのニーズを踏まえた宇宙の広範な利用を進めるという重要な役割を担っている。人工衛星の打ち上げ基数をはじめ、今後5年間の具体的施策が盛り込まれていることなど評価すべき項目も多いが、以下のとおり意見を述べた。

■ 基本的な方針等

第1に、宇宙基本計画の実施にあたっては、宇宙開発戦略本部が司令塔としてリーダーシップを発揮して、関係府省の総合調整を行う必要がある。宇宙開発戦略本部が研究開発と実用衛星の利用を図るため、重要な施策の推進に関する決定権限を持つとともに、特別予算枠を持ち重要プロジェクトの円滑な推進を図ることが求められる。

第2に、2009年度の宇宙関係予算は約3600億円(補正予算案125億円を含む)であるが、例えば5年後には現行の2倍程度をめざし、2013年度の政府予算を少なくとも6000億円オーダーとするなど、予算規模の総額を明示すべきである。

第3に、1990年の日米衛星調達協定により、政府の実用型衛星が国際入札にかけられることになった結果、わが国の実用型衛星の受注を海外企業が占めることとなった。このような協定は世界に例がなく、その撤廃に向けた方針を明確にすべきである。

このほか、基本計画の機動的・弾力的な見直し、政府による各種衛星の継続的な打ち上げ、民間の活力が発揮できる宇宙法制の整備について盛り込むべきである。

■ 個別のプロジェクトについて

第1に、安全保障分野における宇宙開発利用の役割が高まっていることから、早期警戒衛星について、できるだけ早く自主技術を中心として軌道上実証を行い、データの収集・蓄積を推進するとともに、開発・整備することを明確にすべきである。

第2に、準天頂衛星(天頂の軌道を周回する日本版GPS)については、わが国としての自律的測位システムの確立のため、将来の7機体制の構築の実現を明確にし、その第1ステップとして、測位衛星システムの実証に必要となる3機体制の構築を国が責任をもって行うとともに、今後の推進の中核となる省庁を決定すべきである。

このほか、高度情報通信分野の実証衛星システムの研究開発の前倒し・加速化、デブリ(宇宙ゴミ)の軌道位置のセンチメートル級の高精度による把握などが必要である。

【産業技術本部】
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