日本経団連タイムス No.2954 (2009年6月11日)

関西会員懇談会、大阪で開催

−当面の経済運営で意見を交換



関西地区の会員企業代表者約320名が
出席して開かれた関西会員懇談会

日本経団連は4日、大阪市内で関西会員懇談会を開催した。懇談会には御手洗冨士夫会長はじめ、副会長、評議員会副議長や関西地区の会員企業代表者約320名が出席、当面の経済運営や関西地域の活性化について意見交換を行った。

開会あいさつで御手洗会長は、会長就任以来の3年間を振り返り、研究開発・投資促進税制の拡充によるイノベーションの加速、アジア諸国を中心とする経済連携協定(EPA)締結などの具体的成果に触れるとともに、サブプライムローン問題を契機とする経済危機の中、日本経団連が迅速かつ的確に提言を行った結果、政府が需要や雇用の創出につながる政策を矢継ぎ早に打ち出し、景気の底割れの回避に努めたと指摘した。さらに経済を持続的成長軌道に回帰させるため、成長力強化に資する骨太な政策を積極的に提言していくと表明。経済界として、この国の未来について明確な目標を国民と共有しつつ、自ら牽引役となるとの気概を持って活動していくとの決意を述べた。

続いて5月28日の第10回総会で選任された渡辺捷昭副会長、西田厚聰副会長、宗岡正二副会長の3氏が新任あいさつ、抱負を語った。

関西地域の活性化策など

■ 意見交換1

意見交換1では、まず関西経済の活性化をテーマに伊藤忠商事の加藤誠相談役が、(1)環境エネルギー産業(2)ライフサイエンス産業――の育成が重要と指摘。産学連携による有望事例を紹介した上で、こうした研究拠点を有機的に結び付けるインフラ整備と、産業、企業を越えた新たなビジネスネットワークの構築、次世代の技術を世界に先駆けて産業化するための創薬用医療機器の許認可のスピードアップが必要であるとした。

これを受けて渡文明副会長は、民間の創意工夫で新たな産業を生み出し、雇用の創出や産業構造の転換を進めることが不可欠と指摘。日本経団連では規制改革の枠組みを通じて、医療機器関連手続きの見直しなど許認可の迅速化に取り組んでいると述べた。

次に地球温暖化問題等への取組みについて、ダイキン工業の岡野幸義社長が、グリーン・ニューディールは環境投資を地球温暖化対策だけでなく、自国産業の競争力向上や雇用創出につなげる総合戦略であると指摘した上で、政治のリーダーシップの下、官民一体となって全く新しい発想で日本の経済社会の未来像を描く必要があると述べた。またコクヨの黒田章裕社長は、CO2排出量が1990年比で4割近く増加しているオフィス部門の環境対策について、各オフィスで具体的な目標設定を行い、従業員がCO2排出への意識を持つことで排出量減少につながるとの考えを示した。

これを受けて西田副会長は、エネルギー需要・供給両面における促進策の実施を提言した結果、太陽光発電の導入支援や省エネ製品の普及促進を目的とした施策に反映されたことに触れ、今後こうした取組みを強化し、世界をリードしていくべきと強調。業務・家庭部門の対策に関しては、オフィスでの省エネ数値目標の設定、クールビズなどの推進を一層強化すると述べた。

続いて雇用安定・創出の実現について、日新電機の位高光司会長(京都経営者協会会長)が、雇用環境が急速に悪化する中、公労使で運営する総合就業支援センター「京都ジョブパーク」を2年前に設立、雇用に関する相談、カウンセリングなどの対応をワンストップで行っていると紹介した。

これに対し大橋洋治副会長が、幅広い求人情報の集積、カウンセリングや就業支援、フォローアップを含めた一連のサービスをきめ細かく実施することで、社会全体で雇用の維持・安定を実現していくことが重要であり、ジョブパークの取組みは今後のマッチング機能や再就職支援のモデルケースとなると述べた。

引き続き特別報告として、渡副会長が「住宅分野の緊急対策」、榊原定征副会長が「競争力人材の育成と確保」、宗岡副会長が「日中環境植林プロジェクト」、奥田務評議員会副議長が「当面の経済情勢」について、それぞれ報告を行った。

■ 意見交換2

意見交換2では、南海電気鉄道の山中諄会長から、観光振興による地域活性化実現のため、(1)国と地方の役割分担の明確化(2)多言語表記などのソフトインフラ整備と留学生の採用拡大(3)関西国際空港の利便性向上や高速道路のミッシングリンクの解消など交通アクセスの改善――が必要との意見があった。また、ヤンマーの阿部修司副社長は、農業問題の取組みとして、(1)企業が参入しやすい環境の整備(2)植物工場や植物プラントなど土地を選ばない農業――が必要と述べた。

これに対し、岩沙弘道副会長が、観光振興を進めるには、国と地方の役割分担を明確にした上で、地方自治体と事業者が広域的に連携し、創意工夫できる仕組みをつくることが重要と指摘。観光を21世紀のリーディング産業にしたいとの意向を示した上で、交通アクセスの改善は、観光振興や交流人口の拡大のみならず、都市の魅力・競争力の向上にもつながる重要な要素と述べた。また、渡辺副会長は、食料の安定供給のための総合的な食料供給力の強化に向け、(1)優良な農地の確保と有効利用を徹底すべく、多様な担い手の農業への参画(2)農業者とその他の産業が有機的に連携し、新商品や新サービス、経営の効率化を図る農商工連携の一層の促進――が重要とコメントした。

【総務本部】
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