日本経団連タイムス No.2954 (2009年6月11日)

甘利・内閣府特命担当相が理事会で講演

−国家公務員制度改革や規制改革をテーマに


日本経団連が5月19日に東京・大手町の経団連会館で開催した理事会で、甘利明内閣府特命担当大臣が「国家公務員制度改革、規制改革について」と題して講演を行った。
概要は次のとおり。


国家公務員制度改革などで講演
する甘利内閣府特命担当相

■ 国家公務員制度改革の目的

ダーウィンの進化論では、生き残る種とは、体が大きいものでも力が強いものでもなく、環境変化に対応できた種だといわれる。これは企業経営にも国家の運営にも通じる。
国家公務員制度改革基本法の第1条には、「国家公務員に関する制度を社会経済情勢の変化に対応したものとすることが喫緊の課題であることにかんがみ」とある。公務員の組織を、時代や国内外の変化、政府の重要課題の変化に対応できる機動的な組織とすることと、そうした組織を担う人材を育んでいくことが制度改革の目的である。
戦争直後は、社会全体として食料が不足しており、食糧増産が大方針であったため、農林水産省の役割が大きかった。次に、資源に恵まれず国土が狭い日本が発展のための原資を稼ぐためには、貿易立国となる必要があった。そこで、海外から価格・質も含めて最適な資源を輸入し、日本で付加価値を加え輸出して外貨を得るという政策をとったため、経済産業省の役割が大きくなっていった。そして昨今では、科学技術、社会保障等も重要性を増している。

■ 現在の問題点と改革案

国の行政組織に関しては、総務省が各省の機構・定員を査定し、人事院がそれぞれの職務の複雑さや困難さに基づき、職務の級ごとの定数を決めている。しかし、時代の変化によって、局や課のポストの重要性も変化する。新たな政策課題に対応するためには、省庁を越えてポストを再配分する必要があり、政府部門の人事管理を一元化することが喫緊の課題である。それを行うのが内閣人事局である。
内閣人事局長には、総理に意を通じた人を政治任用することが当然であり、時の政権の意向を反映できない人物が就任すべきではない。
現在、国家公務員法等の一部を改正する法律案が国会に提出されているが、審議はまだ始まっておらず、早期の審議開始を期待している。幹部職員(局長、審議官、部長等)の人事については、昇任・降任等を柔軟に処遇できる仕組みが盛り込まれた。従来は、勤務実績不良に該当する場合にのみ、本人の意に反して降格することができたが、新制度では、仮に任務を十分に果たしていても、さらに優秀な人材を登用するためであれば、幹部職を交代できる。これについても、評論家からさまざまな議論が出ているが、曲解して伝わっているのではないかという思いがある。

■ 経済成長と規制改革

次に、規制改革について述べたい。日本は外需依存度が他国に比して高いので、内需型に転換すべきだという意見があるが、私はこの意見は半分しか正しくないと考えている。今後20〜30年、日本の人口が減少していく中で、内需の喚起だけでは限界があり、GDPをプラス成長させるためには、外需をないがしろにできない。
今後の課題は、外需の変動が日本経済に与える影響を最小限にしていくことである。現在のように輸出への依存が高いと、為替の影響を大きく受けてしまう。今後は、日本国内をイノベーション・センターとし、そこで生まれた先端技術や製品をもとに海外生産を行い、利益を日本に還元する。
その際、海外子会社からの受取配当が日本で二重課税されないようにして、還元された利益をイノベーションに再投資できるという制度設計が必要である。私は経済産業大臣だったときにその設計を指示していた。また、イノベーションを引き起こす産学連携を支援するために産業革新機構の設立に向けて取り組んだ。
規制改革は、規制のために起業できない、余分なコストがかかるといったことを回避するために行うものである。私が担当大臣になって初めに行ったのがライフ・サイエンス分野の規制改革である。医療は仁術といわれるが、私は「算術」であると考えている。企業の参入によって技術革新が起こらなければ、患者が利益を得ることができない。そこで、臨床研究に用いる医療機器の規制緩和、医工連携などに取り組んでおり、今後とも、技術革新という視点から規制改革を進めていきたい。

【総務本部】
Copyright © Nippon Keidanren