日本経団連タイムス No.2956 (2009年6月25日)

チュバイス氏との懇談会開催

−ロシアの国家コーポレーション「ロスナノテフノロギヤ」のCEO/日本ロシア経済委員会


日本経団連の日本ロシア経済委員会(岡素之委員長)は11日、東京・大手町の経団連会館でロシアの国家コーポレーション「ロスナノテフノロギヤ」のCEOアナトリー・ボリソヴィチ・チュバイス氏との懇談会を開催した。
懇談会でのチュバイス氏の発言概要は、次のとおり。


チュバイス氏(左)と岡委員長

ロスナノは、2007年にプーチン大統領(当時)が発表したナノテクイニシアティブを契機に設立された。同イニシアティブを実行するにあたり、2つの組織が調整機能を果たしている。1つは研究開発を担当するクルチャトフ研究所、もう1つは実際のプロジェクト推進に関する支援を行うロスナノである。当社はロシアが政府を挙げて推進するイノベーション経済への転換において、中心的な役割を果たす。

ロスナノは日本の政府や経済界こそが先端技術における世界のリーダーであると認識しており、両国間にハイテク分野というかつてなかった新しい協力の窓を開いていきたい。

ロスナノの最大の使命は、ナノテクノロジーの研究成果をビジネスとして商業化することである。当社は予算の圧倒的大部分をナノテク製品の製造企業への支援と育成に配分している。その他の事業の割合は、20%が事業活動を実施するためのロードマップづくりや標準化の推進、認証手続きの策定などのインフラ整備、10%が教育啓蒙活動・人材育成などとなっている。

幅広い事業活動を展開する中で、最も重要なことはビジネスモデルづくり、即ち実際のプロジェクトの設立である。唯一の条件は当プロジェクトがロシア国内で実施されることである。

ナノテクノロジー企業を立ち上げる際、当社はパートナーに対し、具体的なプロジェクトの設備投資向けの資金を拠出することができる。ただし、基本的な方針として、最大限出資しても当社の持ち分は50%マイナス1株とし、少数派の立場を維持する。その理由は、民間企業の管理監督権限を侵害すべきでないと考えるからである。

資本参加以外に低利のルーブル建て融資も行っている。融資の償還期間は最長10年で、支払い猶予期間は5年まで認めている。

プロジェクトの選定と承認の流れについては、まず申請を受け付ける。受理したプロジェクトを、技術的審査と投資プログラム審査の2つの側面から吟味する。厳しい審査を実施しており、今後はその厳密性を堅持しながら、処理速度を向上したい。今年下半期に30件のプロジェクトを承認できればと考えている。

企業の国籍はロシアに限らず、既にドイツやスイスの企業によるプロジェクトを承認した実績がある。ぜひ日本企業からも申請してほしい。

ロスナノは年間5億から12億ユーロの予算を投入し、ナノテク関連の製品の製造、インフラ整備、ロシア国内の研究拠点となるナノテクセンターの建設などに取り組んでいる。各ナノテクセンターは最新の設備を導入し、指導的な役割を果たす企業やベンチャー企業と密に連携して研究開発と人材育成に取り組んでいる。

日本企業との協力の可能性について、ビジネスモデルを含めて具体的に何ができるのか説明したい。日本企業が既に商業化し、実施しているプロジェクトについて当社との協力に関心を持つ場合があると思う。ロシアに工場を建設する際、当社は共同投資家として協力する。直接的な出資に加えてロシア市場を開拓する役割も果たしたい。また、ロシアの研究者とビジネスを結び付ける仲立ちをしたい。税務当局との調整など、行政面で強力に支援することも可能である。事業をロシアのどこで展開すればよいか相談に乗ることもできる。

当社と日本企業の協力プロジェクトが早期に実現することを期待している。

【国際経済本部】
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