日本経団連タイムス No.2958 (2009年7月9日)

東アジアの成長戦略をめぐり二階経産相、中曽根外相と懇談

−成長戦略推進へ合同部会設置を表明



あいさつする御手洗会長

日本経団連は6月30日、都内で、東アジアの成長戦略をめぐる日本政府首脳との懇談会を開催した。懇談会には、政府側から、二階俊博経済産業大臣、中曽根弘文外務大臣らが、日本経団連側から、御手洗冨士夫会長はじめ、渡文明副会長、槍田松瑩副会長、大橋洋治副会長らが出席した。

日本経団連はこれに先がけて4月8日に麻生太郎総理大臣、二階経産相ほか政府首脳に対し、東アジア地域の有効需要の創造を求める提言(「官民連携を梃子に国際協力の戦略的・機動的な展開を求める」)の実現を要望している。その後、政府がアジア経済の成長構想を打ち出したことを受け、今回、その具体的な進め方について、改めて意見交換を行うこととなった。

開会あいさつで御手洗会長は、「世界経済の成長センターであるアジア各国との緊密な連携が重要との認識に立ち、貿易・投資の促進、経済統合の推進、域内の有効需要創造に資する戦略的な協力関係の構築のため、来年春を目途にアジア・ビジネス・サミットを開催し、各国経済界首脳と共通の課題について深く話し合う」と述べた。また、政府の構想に協力するため「日本経団連の中にアジアの成長につながるような政策や具体的プロジェクトを提案するための『東アジア成長戦略のための合同部会』を設ける」ことを明らかにした。さらに、日本経団連が提言した円借款の迅速化とJICAの海外投融資の再開について、今年の骨太の方針に明記されたことに対し、謝意を表した。

次いで二階経産相があいさつし、「(4月に)麻生首相の提唱した『アジア経済倍増構想』の実現のため、アジアの成長促進、拡大するアジア中間所得層への対応、アジア域内の金融資産の積極的活用について、経済界と協力しながら取り組んでいく」と述べた。また、具体的には、東アジア版OECDと呼ばれる東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)、アジア開発銀行(ADB)、アセアン事務局が関係国と協力して策定する『アジア総合開発計画』に日本の経済界の要望も十分に反映させるとともに、中核インフラを官民連携で整備するため、7月から、官民による案件形成のためのPPP( Public-Private Partnership )政策タスクフォースを立ち上げることを表明した。さらに、増大するアジアの中間層への対応として、中間層のニーズに適応した商品の開発・提供や都市インフラ整備、環境面での日本の貢献やアジア域内の金融資産をインフラ整備等の投資に回すための仕組みづくりに言及し、構想の実現に向け、政府、経済界が一体となって協力したいと強調した。

また、中曽根外相は、『アジア経済倍増構想』に対して、「アジア諸国が日本のイニシアチブを高く評価している」「外務省としても麻生首相が表明した最大2兆円規模のODAを活用して、官民連携による広域開発等の具体的なプロジェクトを後押ししたい」と述べた。さらに、「EPA(経済連携協定)の促進により、アジアの成長をわが国の成長へ取り込む」とともに、今年の後半に日本で開催するメコン首脳会議で構想の実現を呼びかけたいと強調した。

意見交換では、日本経団連から、「東アジアの成長戦略を実現するため、必要なODA予算を確保するとともに、今秋を目途に再開の決まったJICAの海外投融資については、機動的に対応できる使い勝手の良いものとして実施してもらいたい」「省エネ、環境技術をアジアに普及するため、無償資金協力を拡充すべきである」「EPAやFTA(自由貿易協定)を推進し、地域統合へと発展させるべきである」「海外の優秀な人材を日本に集めることも重要で、奨学金の充実が必要である」等の意見が出された。

政府側は、ODAについては「過去4割削減されているが、これを反転拡充させ、無償資金協力の大型化も図りたい」と強調した。EPAやFTAについては「ASEAN+3(日中韓)やASEAN+6(日中韓印豪NZ)、さらにAPECワイドの異なる複数のアプローチがある中、日本にとってふさわしいかたちを真剣に検討していく」と述べた。

日本経団連は今後、アジア大洋州地域委員会と国際協力委員会の下に設置する「東アジア成長戦略のための合同部会」において、アジア・ビジネス・サミットに向けたアジア政策に関する提言の取りまとめや具体的なプロジェクトの創出につき、議論していく予定である。

【国際協力本部】
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