日本経団連タイムス No.2959 (2009年7月16日)

東北地方経済懇談会を仙台で開催

−東北経済活性化へ意見交換


日本経団連と東北経済連合会(東経連、幕田圭一会長)は8日、仙台市内のホテルで第42回東北地方経済懇談会を開催した。懇談会には、日本経団連から御手洗冨士夫会長をはじめ副会長らが、東経連からは幕田会長をはじめ会員約180名が参加、「国と地域の活力を総動員して成長軌道に回帰する」をテーマに意見を交換した。

開会あいさつした東経連の幕田会長は、東北経済の厳しい現状、特に雇用環境への懸念を表明。さらに、地域経済の起爆剤として期待される自動車や半導体工場などの新・増設計画に延期や縮小の動きが見られることに懸念を示す一方、企業は東北地域のポテンシャルを高く評価し中長期的な戦略拠点と位置付けており、今の不況を乗り越えれば展望が開けるとの見通しを示した。その上で東北が発展していくための重点施策として、(1)産学官連携による地域産業の競争力強化と産業集積の促進(2)東北の自立に向けた地域経営の実践(3)東アジアを中心とした経済交流圏の形成(4)地域の成長基盤となる社会資本の整備・利活用の促進――の4つを挙げた。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、日本経済は最悪期を脱しつつあるが依然厳しい状況にあるとの認識を示した上で、あらゆる政策を総動員して、経済を持続的な成長軌道に回復させることが重要と指摘。現下の難局にひるむことなく、将来を見据えた大胆な経済政策を速やかに実行し、不退転の決意で経済社会の構造改革を推進していくとの決意を示し、雇用の安定と創出、地球温暖化への対応、道州制の導入、税・社会保障制度の抜本改革など取り組むべき課題を提示した。

■ 活動報告

第1部の活動報告ではまず日本経団連側から、渡文明副会長が「社会資本整備と国際物流の円滑化」、大橋洋治副会長が「雇用の安定・創出に向けて」、岩沙弘道副会長が「観光立国の早期実現に向けた取組み」について報告した。

一方、東経連側からは、西井弘副会長が「地域産業の競争力強化に向けて」を報告。2006年に設立した東経連事業化センターを活用し、(1)知的財産権の確保、マーケティング戦略の立案と実行(2)大学や研究機関等の優れた研究シーズに基づく域内企業との共同プロジェクトの創出、公的研究資金の確保や事業家支援――など、公的機関よりも踏み込んだ支援に取り組んでいると説明した。

次に、松澤伸介副会長が「東北の将来像実現に向けて」を報告。官民連携による「東北圏広域地方計画」に基づく北東アジアや極東ロシアとの連携強化、「北海道・東北未来戦略会議」の報告に基づく産業集積、貿易拡大、国際物流網の構築などでの広域連携の具体化に取り組んでいくと説明した。また、東北という広域のスケールメリットを生かすためには高速道路の整備が重要と指摘し、地域経済への波及効果など、総合的な評価に基づく分析結果を高速道路の戦略的整備に向けた提言として取りまとめたことを紹介した。

続いて、丸森仲吾副会長が「東北におけるグローバル戦略」を報告。産学官による「東北国際物流戦略チーム」による、東北港湾のポートセールスを効果的に実施するための取り組みを説明した。また、官民で設立した「東北観光推進機構」により、東北への誘客拡大に向けてさまざまなプロモーション活動を展開していることを紹介した。

景気対策や道州制導入など

■ 意見交換

第2部の意見交換では東経連側から、(1)急激な景気後退に歯止めがかかりつつあるとはいえ、東北は他地域に比べて一段と厳しい状況(2)食料基地の役割も担っている東北では、第1次産業活性化のため、農商工連携のような農業界と経済界の協力・連携が不可欠(3)新型インフルエンザについては今回の経過や対応の状況を踏まえ、秋以降の第2波や強毒型の発生に備えた対策が必要(4)地球温暖化対策は国民に過大な負担を求めるものであり、日本の国力・生活水準等を将来に至るまで総合的に勘案した上で、諸外国と比較して公平な目標を設定すべき(5)東北の持つ豊富な自然エネルギーやバイオマス資源を効率的に利活用するための研究や技術開発への政府の支援、産業界の後押しが必要(6)税財政を含む道州制がめざす将来の日本の姿について、関係機関や地域住民に向けて意見を表明することが必要――などの意見が出された。

これに対し日本経団連側が、(1)中長期的には、消費税を含む税制抜本改革の実施など、財政健全化に向けた出口戦略の策定も重要(氏家純一副会長)(2)農商工連携の一層の促進のため、農業界との対話を進めるとともに、政府に対し農商工連携制度の拡充を求めている(渡辺捷昭副会長)(3)秋以降の新型インフルエンザの再流行に備え、これまでの対応とその反省も踏まえ、感染拡大防止に向けた今後のあり方について検討する(前田晃伸副会長)(4)政府の中期目標は極めて厳しいものといわざるを得ない。政府に対しては、ポスト京都議定書の国際枠組交渉において、すべての主要排出国の参加、公平な国際競争条件の確保を要請していく(渡副会長)(5)低炭素・循環型社会の実現に向けた取り組みを引き続き継続していく。エネルギー供給面では原子力エネルギーの活用が不可欠、その一層の活用を支援していく(西田厚聰副会長)(6)道州制を進める上で税財源の移譲は極めて重要。こうした問題も含め、道州制の意義や目的を国民全体で共有することが何より重要(岩沙副会長)――と発言した。

【総務本部】
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