日本経団連タイムス No.2960 (2009年7月23日)

G8サミットとMEFでの議論の概要や今後の対応など意見を交換

−鈴木経産省産業技術環境局長と懇談/環境安全委員会地球環境部会


6月8〜10日、イタリア・ラクイラにおいて、G8サミットとエネルギーと気候に関する主要経済国フォーラム(MEF)が開催され、気候変動が主要な議題として取り上げられた。
そこで、環境安全委員会地球環境部会(猪野博行部会長)では、7月14日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、経済産業省の鈴木正徳産業技術環境局長から、G8サミットとMEFにおける議論の概要や今後の対応などにつき意見交換を行った。鈴木局長の説明概要は次のとおり。

長期目標や複数の基準年、途上国による取り組みなど

■ G8における主な争点

<「2℃」問題>

G8首脳宣言を作成する過程では、気候変動への取り組みに関する記述に多くの時間が割かれた。
「我々は、産業化以前の水準からの世界全体の平均気温の上昇が摂氏2度を超えないようにすべきとの広範な科学的見解を認識する」との文言については、日本国内で「数値目標に合意した」かのような報道も見られたが、「認識」したに過ぎず、数値目標ではない。

<長期目標と基準年>

温室効果ガス削減の長期目標については、「2050年までに世界全体の排出量の少なくとも50%の削減を達成するとの目標を全ての国と共有する」として、世界全体の排出量半減目標を確認した。
また、「この一部として、先進国全体で温室効果ガスの排出を、1990年又はより最近の複数の年と比較して2050年までに80%またはそれ以上削減する」という文章が盛り込まれた。
したがって、先進国全体での80%以上の削減は、世界全体での2050年半減が前提とされていることになる。
一方、わが国がかねて求めてきた複数の基準年の採用については、90年のみを主張するEUとの交渉の結果、日本の意向が反映されたかたちとなった。

<市場メカニズム>

G8首脳宣言のもう一つのポイントは、市場メカニズムである。具体的には、「各国の事情を考慮しつつ、炭素取引システムの潜在力及びその可能な連関について更に探査する」という文言が盛り込まれた。
排出量取引については、もともと積極的な欧州のみならず、国内排出量取引制度の導入を柱とする気候変動対策法案が下院で可決された米国からも、強い意見が表明された。
こうした中、わが国としては、排出量取引の国内統合市場を試行的に実施中である現状を踏まえ、「各国の事情を考慮しつつ」という文言を挿入した。

■ MEFにおける主な争点

<途上国の取り組み>

MEF首脳宣言では、途上国による取り組みが大きな争点となった。
困難な交渉の結果、「開発途上国は、その排出量に関する予測された効果が、中期的に対策をとらないシナリオから意味のある離脱を示すような行動を敏速に実施する」として、途上国にも、排出抑制に資する行動を求める文言を盛り込むことができた。
また、「世界全体及び各国の排出量のピークアウトは可能な限り早期に実現されなければならず、(中略)開発途上国におけるピークアウトのための期間はより長いものであることが認識される」と、途上国のピークアウトに初めて言及した。これは、一定の成果と言える。

<MEFの継続>

MEFは今年始まった枠組みであるが、その有効性が広く認識されたこともあり、首脳宣言の末尾に、「コペンハーゲンでの合意を促進するために、本年の残りの期間を通じて会合を続ける」ことが明記された。

■ 今後のスケジュール

今後、8月から11月にかけて、COP15に向けた一連の国連特別作業部会が開催される。また、9月22日の国連の気候変動に関する首脳級会議や9月24、25日のG20サミットも重要な外交日程である。
国際交渉の趨勢を左右する重要なポイントは、米上院に上程される気候変動対策法案の動向であり、引き続き状況を注視していきたい。

【環境本部】
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