日本経団連タイムス No.2961 (2009年7月30日)

「経済危機からの脱出後を見据えた経済政策のあり方」で説明を聴く

−内閣府経済社会総合研究所・岩田所長から/経済政策委員会


日本経団連の経済政策委員会(奥田務共同委員長、畔柳信雄共同委員長)は9日、東京・大手町の経団連会館で、岩田一政・内閣府経済社会総合研究所所長から、「経済危機からの脱出後を見据えた経済政策のあり方」について説明を聴いた。

岩田所長はまず、わが国経済の現状について、「金融市場が安定しつつあり、景気も最悪期を脱して安定化の方向に向かっているが、これは政策効果によるところが大きい」と指摘した上で、「本格的な回復に向けては、足元で拡大しているGDPギャップ(総供給と総需要の差)が解消されていかなければならない」と説明。また、「GDPギャップの拡大は、失業率の上昇とデフレ圧力の増大につながる」「とりわけ失業率について、3月のOECD予測によるわが国のGDPギャップの推計(2010年マイナス10%)に基づけば、今後7%にまで達するおそれがあった」「今般の経済危機対策では、失業率のさらなる上昇を防ぐために、対GDP比3%、金額にして15兆円という大規模な補正予算を組んだところである」と述べた。

次に、中期経済シナリオと出口戦略について、「中期的な経済のあり方については、さまざまな面でほころびが目立つ現在の社会保障制度の改革と整合性を取っていくことが重要である」「わが国の出口戦略としては、経済が潜在成長率の経路に戻ったことを確認した上で、『中期プログラム』(税制抜本改革を含む)を実施することとしている」と説明。また、「『中期プログラム』では、今後増加が見込まれる社会保障経費は安定財源で賄うとされていることから、内閣府では消費税率の引き上げについて、3つの政策選択(3%、5%、7%)による経済・財政への影響について試算を行った」「試算では、消費税率を5%引き上げれば2021年度に、7%引き上げれば2018年度にプライマリー・バランスを黒字化することが可能である」と言及した後、「こうした出口戦略をしっかりしたものとするためには長期金利の安定が条件である」と述べた。

また、低下した潜在成長率を向上させる手段として、イノベーションによるTFP(全要素生産性)の向上に加え、労働者の生産性向上が重要であると指摘。「増加している非正規雇用者にキャリアパスの展望、もしくは生産性を高めるインセンティブを与えることが重要である」と述べた。

【経済政策本部】
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