日本経団連タイムス No.2963 (2009年8月13日)

自民、民主両党の政権公約で意見交換

−両党幹事長ら幹部招き説明会


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は3日に自由民主党、4日に民主党の幹部をそれぞれ招き、政権公約に関する説明会を東京・大手町の経団連会館で開催した。両日とも1000名規模の会員企業関係者の参加があった。

■ 自民党


細田自民党幹事長

3日の会合には、自民党から細田博之幹事長、保利耕輔政務調査会長、菅義偉政権公約作成プロジェクトチーム座長、石原伸晃幹事長代理、園田博之政務調査会長代理の5名が出席した。

冒頭、御手洗会長は「今回の総選挙は、わが国の将来を左右する極めて重要な選挙である。わが国が経済危機からの脱出を確実なものにできるかどうか、そして、成長基盤をより強固なものとできるかどうか。これらは、総選挙の結果に大きく影響される」と述べた上で、「有権者、特に企業人としては、経済社会の活力を高める観点から、政策本位で積極的に行動することが重要だ」とあいさつした。

続いてあいさつに立った細田幹事長は、「昨年来の経済危機に対して、麻生内閣は景気対策や雇用対策に力を注いできた。今回の政権公約も、経済危機からの脱出に原点がある。経済を発展させ、国民生活を支えることが政治の最も重要な責務だ」と発言、さらに「まずは不況を克服し、これを核にしながら、行革などの他の政策課題に取り組んでいく」と述べた。続いて、菅座長が政権公約の概要を説明、「キーワードは『安心』『活力』『責任』だ。国民の不安を取り除くと同時に、技術力などの日本の潜在力を高めていく。さらに、テロや拉致問題に毅然として対応し、海賊問題などの解決に道筋をつける」と発言した。

その後の意見交換では、日本経団連側から、経済成長戦略、年金改革の実現方策、道州制への考え方などに関する質問が出された。成長戦略については、細田幹事長が「G7の中での1人当たりGDPを、まずは2001年水準の2位まで回復させたい。このため、技術開発の推進や女性・高齢者がより活躍できる環境整備などに取り組みたい」と発言した。また、年金問題に関して石原幹事長代理は「二大政党制の下で改革を進めていくためには、超党派の議論が不可欠だ。政治の責任として、両党が歩み寄り、国民生活の安定のために改革を進めなくてはならない」との考えを表明した。さらに、道州制については園田政調会長代理が「政権公約に2017年までの導入を明記した。さまざまな課題を乗り越え、導入に向けたプログラム、スケジュールを詰めるべく、2011年ごろまでに基本法を制定する」と述べた。

■ 民主党


岡田民主党幹事長

4日の会合には、民主党から岡田克也幹事長、直嶋正行政策調査会長、玄葉光一郎分権調査会長、大塚耕平政策調査会副会長の4名が出席した。

岡田幹事長は、「民主党の成長戦略は内需中心である。まずは直接の給付により、個人所得を増やし、消費拡大につなげていく」と発言した。加えて、地方分権については、「民主党は道州制の導入を否定しているわけではない。第一歩としては、住民に最も近い基礎自治体に権限や財源を移譲し、その上で、市町村では対応できない部分について、都道府県、または州や国が対応していくこととすべきだ」と説明した。

また、温室効果ガス削減の中期目標として、民主党が90年比25%減という目標を設定していることに触れ、「2050年までに先進国全体で80%削減することが確認されている以上、2020年段階では25〜30%の削減が必要となる。この目標を達成するために、排出量取引制度や地球温暖化対策税、固定価格買取制度といった、あらゆる政策手段を導入しなくてはならない。また、米中印のポスト京都への参加が前提だ」と述べた。さらに岡田幹事長は、政権公約に盛り込んだ企業・団体寄付の全面禁止について、「企業寄付のすべてが悪だとは思っていない。しかし、企業寄付の一部には良からぬ意図を持つものがあることも事実だ」とし、個人寄付の拡大の必要性を指摘した。

その後の意見交換では、日本経団連側から、「総選挙後、直ちに年金改革の与野党協議を進める考えはあるか」「温室効果ガス削減目標を25%にした場合、経済や国民生活への影響をどう考えているのか」「製造現場への派遣禁止は、世界的な競争が激しさを増す実態にそぐわないのではないか」などの質問が寄せられた。

これに対し、民主党側からは「自民党が本気で年金制度の抜本改革を進める考えなら、超党派の議論に臨みたい」(岡田幹事長)、「温暖化対策には、需要を創出するという側面がある。これはコストとは言い切れない」(岡田幹事長)、「景気変動が避けられないことを考慮すれば、製造業現場への一定の労働者派遣も必要だ。現行の派遣法で認められている26業種に加えて、製造業務に関する専門職を加えることも検討している」(直嶋政調会長)との発言があった。

【政治社会本部】
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