日本経団連タイムス No.2968 (2009年10月1日)

「科学技術政策の国際競争力」

−奥村総合科学技術会議議員、常任理事会で講演


日本経団連は9月2日、東京・大手町の経団連会館で常任理事会を開催し、総合科学技術会議の奥村直樹議員が「科学技術政策の国際競争力」をテーマに講演を行った。
講演の概要は次のとおり。

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総合科学技術会議は、内閣総理大臣を議長として閣僚と有識者から構成されており、内閣総理大臣等の諮問に応じて科学技術の総合的かつ計画的な振興を図るための基本的な政策や予算、人材等の資源の配分の方針等について調査審議を行っている。

科学技術政策の推進にあたっては、国際競争においてわが国が置かれている現状を正しく認識することが不可欠である。主要国の研究開発費(OECD購買力平価換算)は、米国が44.4兆円で最も多く、2位が日本の18.9兆円、3位が中国の10.8兆円である。これを対国内総生産(GDP)比で比較すると、日本は3.67%で最も多く、2位が韓国の3.22%である。しかし政府負担研究費の割合は、EU主要国は30%前後、米国は27.7%であるが、日本は17.4%である。

平成21年度のわが国の(研究開発費の)政府予算は、当初予算で3兆5639億円、補正予算を含めると4兆9104億円であるが、その内訳は文部科学省が65.7%、経済産業省が14.9%である。一方、米国では大部分の研究開発投資がDOD(国防総省)、NIH(国立衛生研究所)、NASA(航空宇宙局)等のミッション・オリエンテッドな官庁のもとで行われている。

このような予算投入の結果としての基礎研究力を、主要国等の論文相対被引用度で比較すると、日本は米国やEU主要国よりも低く、アジア各国からは徐々に追い上げられている状況にある。研究開発投資や基礎研究力等の国際比較を踏まえて科学技術政策を推進しなければならない。

もう一つの重要な課題として高度科学技術人材の育成がある。大学院在学者数は、1991年から2000年までの9年間で2倍超となり、現在まで増え続けているが、学生の質に問題があるとの指摘もある。

日本技術者教育認定機構による認定基準では、修士課程には62単位以上に相当するプログラムが求められるが、大学院設置基準では、修士課程の修了要件は、「30単位以上の修得と修士論文または特定の課題についての研究の成果の審査と試験に合格」とされている。また、欧州での修士修了要件は120ECTS(注)単位であり、これは日本の大学院での80単位に相当する。また、米スタンフォード大学情報科学研究科博士課程を修了するまでのコースワーク時間は4050時間程度であるが、日本での博士課程コースワークの修了要件は30単位で、修士と博士課程の合計コースワーク時間は2700時間程度である。

総合科学技術会議では「大学院における高度科学技術人材の育成強化策検討ワーキング・グループ」において、高度科学技術人材の育成のあり方を検討しているが、単位やコースワーク時間を含め、大学院教育の「見える化」を行い、それをもとに提言をしていきたい。

注=European Credit Transfer System、欧州単位互換制度
【総務本部】
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