日本経団連タイムス No.2969 (2009年10月8日)

オバマ政権の内外政策聞く

−ユーラシア・グループのブレマー社長と懇談/アメリカ委員会


日本経団連は9月28日、東京・大手町の経団連会館でアメリカ委員会(長谷川閑史委員長)を開き、政治リスクが経済活動に与える影響の分析で知られるシンクタンク、ユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長から、オバマ政権の内外政策と日米関係などについて聞いた。
説明の概要は次のとおり。

今後の日米関係や民主党政権に対する見方なども

(1)グローバルな政策形成における日本の役割

先のG20ピッツバーグ・サミットでは、グローバルな経済政策形成の場がG8からG20に移行したことが明らかになった。これは第二の経済大国である日本にとって望ましいことではないが、G20も安保理と同様、調整・連携上の課題を抱えており、G20以外の地域的な組織の方が重要になっていくだろう。
G8の重要性の低下は、同時にG2の重要性の高まりを意味しているが、これは日本にとってチャンスである。貿易、天然資源、安全保障、気候変動などをめぐり、米中関係は一層競争的になり、今後確実に米国において重要な政治的課題となる。これが顕著になるにつれ、日米関係の重要性が増してくるだろう。

(2)民主党政権に対する米国の見方

日本の政権交代そのものはワシントンで話題とはなっていない。日米ではさまざまな分野において協力関係が続くとみられるが、米国政府内で責任をもって対日政策を遂行する者はおらず、外交政策自体オバマ政権の優先課題ではない。

(3)気候変動問題への米国の対応

12月のコペンハーゲンにおけるCOP15(気候変動枠組条約第15回締約国会議)について、日本にはオバマ政権が各国と協力し、積極的に取り組むとの期待感がある。しかし、12月までに上院で気候変動に関する法案が成立する見込みはなく、オバマ大統領としてもCOP15で新たな内容を約束することには躊躇するだろう。
鳩山総理が国連気候変動サミットでCO2排出量の1990年比25%の削減を言明したことにより、オバマ大統領は難しい立場に立たされた。米国は日欧や中国、インドと比較しても立場が悪くなるだろう。

(4)オバマ政権の国内政策

医療制度改革法案は年末には成立するだろう。当初の法案より弱いものとなるが、民主党議員は全員法案を支持するとみられ、改革は成功したとみなされる。これは、自らの政策に誤りがあれば法案も修正できるオバマ大統領の能力によるところが大きい。

(5)テロとの戦い

外交上の重大な危機を招く可能性があるのはアフガニスタンである。情勢の悪化に伴い増派を求める軍部に対し、国務長官、副大統領などは撤退を主張している。政治的コンセンサスの形成を目指して小規模の増派という結論を下さざるを得ないことから、結果として治安は改善せず、アフガニスタン政策は失敗に終わる可能性が高い。

(6)議会との関係

アフガニスタンおよび気候変動問題における失敗と、10%の失業率があいまって、2010年の中間選挙において民主党は下院で大量の議席を失うとみられるが、こうした選挙結果はオバマ政権にとって有利となる。下院において民主党の議席が減ることにより、逆に、就任直後の2年間と比較して、オバマ政権はより穏健な政策を通しやすくなるだろう。

【国際経済本部】
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