日本経団連タイムス No.2971 (2009年10月22日)

第57回北海道経済懇談会開く

−わが国の成長戦略、農業、観光等テーマに



札幌で開かれた北海道経済懇談会

日本経団連(御手洗冨士夫会長)と北海道経済連合会(道経連、近藤龍夫会長)は14日、札幌市内のホテルで「第57回北海道経済懇談会」を開催した。懇談会には、日本経団連から御手洗会長をはじめ副会長らが、道経連からは近藤会長はじめ会員約200名が参加し、「経済の安定成長を目指した新たな国づくり・地域づくり」を基本テーマに、活動報告と意見交換を行った。

開会あいさつのなかで道経連の近藤会長は、北海道の経済情勢について、公的支出への依存度が高い北海道は、世界同時不況以降、設備投資や雇用等の面で厳しさが深刻化しまだ底が見えない状況にあると説明した。そのうえで、北海道経済の自立的発展に向けて、(1)既存産業の高度化と国内需要の確保(2)海外市場への展開(3)社会資本整備(4)「道州制」を究極の姿とする地域主権型社会への転換――の4つがポイントになると指摘。特に、北海道が強みを持つ農業、食品加工、観光を中心に、製造業等との連携による「食」クラスターの形成が重要との認識を示した。

来賓の高橋はるみ北海道知事は、「北海道の経済・産業構造を民間主導のバランスのとれたものに変えていくことが重要」と指摘。高度な技術人材や研究成果の蓄積を活かして、一次産品の高付加価値化やIT・バイオ等次世代産業の振興に取り組んでいることを紹介した。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、「政権が交代しても、必要な政策を提言し、実現していくという政策的スタンスは基本的に変わらない」との考え方を示した。また、新内閣に対して、経済危機からの脱却を最優先に、社会保障制度改革、企業の国際競争力向上、地方分権・道州制導入などへの取り組みを強く要請していることを説明し、要望の実現に向けた理解と協力を呼びかけた。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、日本経団連より、渡文明副会長から「税制抜本改革の実現」、池田弘一評議員会副議長から「道州制の導入」、前田晃伸副会長から「新型インフルエンザ対策の推進」を訴えた。税制抜本改革の基本的な方向性は、(1)持続可能な社会保障制度の確立に向けた安定財源の確保(2)法人実効税率の引き下げ(3)少子化対策として給付付き税額控除の導入(4)税制のグリーン化推進と新税創設の反対――を挙げた。道州制に関しては、鳩山内閣の掲げる分権改革の究極の姿こそ道州制であると訴える緊急提言を公表することを表明し、道州制の先行事例となり得る北海道の取り組みを後押しするため、道州制特区推進法の見直しを改めて強調するとした。新型インフルエンザ対策については、会員企業を対象とした調査結果(8月13日号既報)を紹介したうえで、遅れている鳥由来の新型インフルエンザ対策の実行につき、今月中に政府へ要望する予定であることを明らかにした。

他方、道経連からは、横山清副会長が「北海道経済の活性化に向けた取り組み」、林光繁副会長が「少子高齢化・人口減少社会に対応した高速交通ネットワークの役割」、中井千尋副会長が「北海道型道州制のあり方」についてそれぞれ報告。北海道経済の活性化に関しては、産学官連携の具体的な活動拠点として“北大リサーチ&ビジネスパーク”で研究開発施設の集積が進んでいることや、産業クラスター創造活動として、過去10年で119件のプロジェクトが立ち上げられていることなどを紹介した。また、高速交通ネットワークの整備により、高齢化・過疎化が進む北海道で、同時間内に移動できる人口を増加させることが可能になることを説明し、理解を求めた。道州制に関しては、画一的でない基礎自治体のあり方等を目指していることが報告された。

■ 自由討議

第2部の自由討議では、道経連から、(1)当面の経済運営とわが国の中長期的な成長戦略(2)わが国農業と食料供給力の強化(3)北海道観光の競争力強化(4)温室効果ガス削減の目標への対応(5)少子高齢社会への対応(6)今後の地域づくり――の6点について質問があった。

これに対して日本経団連は、(1)成長を続けるアジア諸国の需要の取り込み、少子・高齢化や環境等の分野における内需拡大(氏家純一副会長)(2)北海道の農・食の強みと豊富な観光資源を組み合わせた農商工連携の推進(大橋洋治副会長)(3)観光人材確保の仕組みづくりや北東アジア・極東ロシアとの連携(佃和夫副会長)(4)主要排出国の責任ある参加、先進国間の限界削減費用が同等となるようなポスト京都の枠組み策定の働きかけ(西田厚聰副会長)(5)あらゆる産業における技術的イノベーション、少子化対策の推進、社会保障財源の確保(森田富治郎副会長)(6)基礎自治体主導による地域経営の推進と地方への権限・財源の移譲(岩沙弘道副会長)――等を対応策として挙げ、今後の取り組みに向け理解を求めた。

【総務本部】
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