日本経団連タイムス No.2972 (2009年10月29日)

「急がれる成長戦略としてのグリーンニューディール政策」

−日本総研・藤井調査部長から説明聞く/経済政策委員会企画部会


日本経団連の経済政策委員会企画部会(村岡富美雄部会長)は14日、藤井英彦・日本総合研究所調査部長から、「急がれる成長戦略としてのグリーンニューディール政策」をテーマに説明を聞いた。

藤井氏はまず、ドル安に伴う一次産品価格の上昇や中国をはじめとする新興国経済の飛躍的成長によって、資源制約の高まりや早期化が見込まれることから、環境保全のみならず、経済や社会活動そのものを維持するために、環境政策が必要であることを指摘。EUをはじめ世界各国では、景気浮揚を兼ねた対策が講じられていることを説明したうえで、そのポイントは「エネルギー」「都市」「産業」の3分野における構造転換であると述べた。

第一に、エネルギーについては、先進国のみならず新興国でも、非鉱物性燃料へのエネルギー転換に向けた投資が積極的に行われている一方、わが国では取り組みが遅れていることを指摘。ただし、見方を変えれば、取り組みが遅れた分、国内に巨大な潜在市場があるとみることも可能であり、研究・開発・生産力におけるわが国の競争力が世界屈指の水準であることも考慮すれば、エネルギー投資が日本の経済成長のカギになり得ることを強調した。

第二に、都市については、エネルギー消費の抑制・効率化という観点から、市街地をコンパクト化し、省エネを追求するような構造転換が行われていると説明。ポイントとして、(1)都市面積の最適化(2)適切な集積(3)街路小売の活(4)関連投資の促進(5)公共サービスの効率的ネットワークの構築(6)効率的な公共交通システムの整備――の6点を挙げた。

第三に、産業転換について、旧来の化石燃料依存型の経済・産業・社会は、資源が枯渇し、資源価格が高騰するなかで、衰亡を避けられないが、逆にみれば、化石燃料に依存しない産業・市場の育成に成功した国が新たな成長エンジンを手に入れることができると論じたうえで、新エネルギー産業創出に向けた各国の取り組みは、すでに関連分野で新たな雇用を創出するなど着実に成果を挙げていると述べた。

あわせて、こうした環境産業・市場の創出に向けた横断的な取り組みとして、ヒトづくりが成否のカギを握っているとの考えを示し、EUで推進されている職業訓練や職業紹介などの積極的な雇用対策を高く評価した。

【経済政策本部】
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