日本経団連タイムス No.2974 (2009年11月12日)

今後の都市政策のあり方について説明聞く

−青山・明治大学公共政策大学院教授から/都市・地域政策委員会


日本経団連は10月30日、東京・大手町の経団連会館で都市・地域政策委員会(岩沙弘道委員長)を開催し、青山〓(やすし)・明治大学公共政策大学院教授から、今後の都市政策のあり方について説明を聞くとともに意見交換を行った。青山教授の説明の概要は次のとおり。

■ コンパクトシティと地方都市活性化

都市政策をめぐっては、昨今、コンパクトシティの形成を通じた地方都市の活性化が叫ばれている。戦後長らく全国総合開発計画(全総)のもとでとられてきた「分散」政策が機能しなくなり、2000年の工業等制限法の廃止、都市再生法の制定あたりから、「集中」への政策転換が図られ始めた。また、地方でも中心都市では人口増加が続いている。コンパクトシティという政策よりも、都市化という実態の方が先行している。

■ まちづくりと都市自治

米国では、BID(Business Improvement District)と呼ばれる町会兼商店街連合会のような組織がまちづくり、都市の自治に積極的に関与している。英国でもParish(教区)と呼ばれる教会単位の集落組織が都市の自治を担っている。欧米では都市の振興と都市の自治が密接な関係にある。

■ 都市政策のリセット

都市計画法にはさまざまな問題が発生しており、21世紀の都市にかなった法律へと抜本的に改正する必要がある。
具体的には、第1に、現行の都市計画法では、土地の用途によって自動的に一定の容積率、建ぺい率が決まっている。しかし、人々の価値観は建物の高さ、景観、デザインなど多様化しており、地域によっても異なる。全国一律の制度としない方がよい。
第2に、都市計画権限については、都市の規模に関係なく、都市計画審議会、意見書の提出、住民説明会、公聴会といった手続きが一律に定められている。大都市では議会で多数決の承認が得られない、地方の小都市では住民参加による議決ができないといった課題がある。地域の実情に応じて手続きが異なってもよいはずである。
第3に、例えば東京都千代田区の昼間人口は85万人だが、夜間人口は4万人にすぎない。しかし、まちづくりなどに関する政策の意思決定は、夜間人口のみでなされる。都市の富を稼ぎ出している昼間人口も政治参加する仕組みが必要である。
また、容積率や斜線制限、前面道路制限といったさまざまな規制によって、東京には世界の大都市と比べて超高層ビル(住宅)が極めて少ない。そのため、東京23区に勤務する人の半分以上が片道1時間以上かけて通勤しており、一人当たり居住面積も極めて小さい。
今後の都市政策は、全国一律ではなく、地域特性に応じて、地域が自らの権限で政策を実行していくことが重要である。

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当日は、青山教授の説明に続き、提言案「PFIのさらなる活用を求める」の審議が行われ、委員会として了承された。

【産業政策本部】
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