日本経団連タイムス No.2974 (2009年11月12日)

「地域別分析からみた日本経済の実態と問題の本当の所在、そして対処策」聞く

−経済政策委員会企画部会


日本経団連の経済政策委員会企画部会(村岡富美雄部会長)は10月22日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、日本政策投資銀行の藻谷浩介国際統括部所属参事役から、「地域別分析からみた日本経済の実態と問題の本当の所在、そして対処策」をテーマに説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 高齢者の激増と現役世代の減少、経済社会への影響

日本の人口構成は、団塊の世代を中心とする中高年層の加齢により、65歳以上の老年人口が急増する一方、現役世代とされる15〜64歳の生産年齢人口は減少している。このため、日本国内の需要構造は大きく変化している。特に、高度成長期に地方から大量に若者が流入した首都圏では、今後の老年人口の増加が急速だ。若者の流入にもかかわらず、生産年齢人口の減少も始まっている。このような人口成熟(高齢者の激増+生産年齢人口の減少)は、医療・福祉の需給を逼迫させ、他方で自動車や家電、住宅など現役世代中心に消費されている財の需要縮小を招いている。これは過去35年間の出生者数減少の結果なので、流れを食い止めることは不可能だ。

■ 生産年齢人口減少時代の成長戦略

一方、生産年齢人口の減少は、雇用者数の減少とそれに伴う人件費総額の減少を通じて、生産性を向上させるため、国際競争力に対してはプラスの影響を及ぼす。その結果、今回の景気拡張期では、日本の輸出は大きく増加し、最終的には個人所得(課税ベース)の絶対額も増加した。しかし、生産年齢人口減少のもとで個人消費は伸びず、むしろ今般の金融危機によって、輸出依存の日本経済は、他の先進国以上に影響を受けた。消費が伸びなかった背景には、株式等の金融資産を持つ高齢富裕者層の、モノに対するウォンツの低さもある。

また、日本は現在、世界で最も人口成熟が深刻な国だが、中国やインドでも、今後20年〜半世紀の間には日本の後を追って同じ現象が進んでいく。言いかえれば、先に成熟した日本で成功すれば自ずと世界でも成功すると考えられる。その実験場がまさに日本の地方市場である。現在日本で成功している企業の多くは、高齢化が進む地方で成功した企業であり、地方から撤退した企業に将来性はない。地方をマーケティングの場として活用し、高齢者の需要を創造していくことが今後の成長のカギを握る。

【経済政策本部】
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