日本経団連タイムス No.2976 (2009年11月26日)

エグゼクティブ法務戦略セミナー開催

−知財立国産業政策としてのコンテンツのネット流通で


日本経団連事業サービスは13日、東京・大手町の経団連会館で日本経団連と連携し、森・濱田松本法律事務所弁護士の松田政行氏を講師に迎え、「エグゼクティブ法務戦略セミナー」を開催した。同セミナーは経営法務の知識の取得とその戦略的活用を目的として、企業法務に携わる役員を対象に5回シリーズで行われるもので、第4回となる今回のテーマは「知財立国産業政策としてのコンテンツのネット流通」。松田氏の説明は次のとおり。


説明する松田弁護士

著作権市場のうち、音楽・レコード産業は、1曲当たりのネット配信サービスを低価格で通信料とともに課金するビジネスを確立し、ネット流通に最も適したコンテンツとして、早くから市場の転換を図ってきた。一方、映像ビジネスは、配信する際のデータが重く、音楽配信よりも大きなシステムが必要になること、低価格の配信が難しいこと、権利処理に膨大なコストを要すること等の理由からネット流通が遅れている。また、出版ビジネスは、権利処理に困難性が伴うものの、テキストデータは音楽に次いでネット配信しやすい特性を有するため、情報の蓄積、配信ビジネスが拡大する可能性を秘めている。

映像や出版ビジネスのネット流通を促進するため、最大の弊害となっている大量の権利処理について官民レベルで検討が進められており、その一つとして「ネット法構想=放送事業者等にインターネット上の流通に関する権利を付与(ネット権)し、著作権者等からのネット許諾義務を負う」が提言されている。

また、米国のフェアユース規定に近い一般規定を導入することによって、ネット上にコンテンツの新規ビジネスを誘発させようという主張もある。これに対して、権利者団体や日本経団連等からは、すでに内外のサーバーから違法に複製されたコンテンツが大量に配信され、適法ビジネスの障害となっており、このような一般規定を導入すれば権利者の適法ビジネスを阻害するとの慎重論が出されている。米国でフェアユース規定とともに著作権者の権利が実効性をもって機能しているのは、権利者団体自らが訴訟当事者になり得ること、クラスアクションによって訴訟の当事者以外にも裁判の効果を及ぼし得ること、さらに著作権侵害に対する賠償額が極めて多額になり得ることなど司法システムにおける権利と利用のバランスが図られているからである。一方、日本は、順法精神に依存しているのが現状であり、日本経団連の導入慎重論に賛成である。

すでにGoogle(グーグル)は、世界各国の図書館や出版社などと提携し、スキャンした書籍を閲覧できる「Google Book Search」サービスを展開しており、米国出版社協会などとの間で争われていた訴訟が和解した。しかしながら、この暫定和解が成立すると、同サービスでは、図書館との提携でスキャンした書籍について、絶版または市販されていない書籍の全文が閲覧できるようになり、またこの和解には、「米国著作権を有するすべての人物が含まれる」とされているため、日本の著作権者にも影響が及ぶこととなる(セミナー後の11月14日、暫定和解が修正され、日本の著作権者は和解に含まれないことになった)。

日本でもすでに放送コンテンツの利用については、民間による協定方式により、大量権利処理の民間制度が創設されており、また書籍検索制度の創設についても民間で協議が始まっている。日本のコンテンツ市場は諸外国からも人気を博していることから、科学技術・文化の礎であるコンテンツの集約・流通を、わが国の重要な産業政策として位置付け、産学官の協力によって推進していく必要がある。

【経済基盤本部】
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