日本経団連タイムス No.2977 (2009年12月3日)

「資産除去債務と環境債務」セミナー開催

−実務上のポイントや対象資産の選定と範囲など聞く


企業担当者ら約150名が参加したセミナー

日本経団連事業サービスは11月20日、東京・大手町の経団連会館で日本経団連と連携し「資産除去債務と環境債務‐資産除去債務会計への対応」セミナーを開催、企業の担当者など約150名が参加した。

2010年4月から、将来発生が見込まれる資産除去費用について前倒しで財務諸表に開示することを求める資産除去債務に関する会計基準が適用される。各企業では同会計基準への対応が急務となっているが、実際に運用するための基準や環境債務への考え方が明確になっておらず、企業の現場では対応に苦慮している。そこで、日本経団連事務局の監修のもと、企業の環境や会計の実務担当者のニーズに沿ったわかりやすい解説本として、『実務Q&A資産除去債務と環境債務‐資産除去債務会計への対応』を出版、セミナーでは、その内容をもとに資産除去債務と環境債務の実務上のポイントについて、同書を執筆したあずさ監査法人の齋尾浩一朗氏、みずほ情報総研の光成美樹氏が講演した。

1.資産除去債務に関する会計基準の留意点

まず齋尾氏から、資産除去債務に関する会計基準を理解するうえでのポイントの説明があった。特に、会計基準の概要や処理方法、他の会計処理(減損会計、引当金)との関係、国際会計基準との相違等について解説するとともに、会計基準に記載されていない実務上の内容や法令・事例の考え方についても、アスベストやPCBなどの処理を例示して対応方法が示された。

また今後の対応として、国内外の子会社・関連会社を含めた資産除去債務のリスク把握や見積もりには時間とコストがかかることから、リスク・アプローチによる判断も検討する必要があるとした。さらに、企業における各担当部門間(経理・財務、法務、環境等)のコミュニケーションがより一層必要になることが指摘された。

2.対象資産の選定と範囲について(該当法令、計上作業および開示事例を踏まえて)

続いて、光成氏から、対象資産の選定と範囲について説明があった。資産除去債務に関する会計基準では、該当する法令や対象資産の規模等についての情報は記載されておらず、見積基準にも詳細な規定はないため、各企業が独自に自社の開示方針を決定し、継続的に計上する仕組みを構築する必要があるとの説明があった。

そのうえで、資産除去債務の計上に必要な情報や作業、計上プロセス等について各企業での対応例を踏まえながら解説するとともに、資産除去債務を生じさせる主な国内法令として石綿(アスベスト)障害予防規則や改正土壌汚染対策法、PCB特別措置法等を取り上げ、それらに関する具体的な対象資産の選定方法や処理方法が示された。

最後に、将来的な国際会計基準での適用を踏まえ、環境債務全体を整理することで、資産除去債務の説明も容易となり、CSR報告等の自主開示や将来的な意思決定にも有効となると締めくくった。

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なお、解説本『実務Q&A資産除去債務と環境債務‐資産除去債務会計への対応』に関する問い合わせは、日本経団連事業サービス(電話03‐6741‐0043)まで。

【環境本部】
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