日本経団連タイムス No.2978 (2009年12月15日)

社会的課題解決のための企業の役割について川北IIHOE代表が講演

−社会貢献推進委員会


日本経団連は1日、東京・大手町の経団連会館で社会貢献推進委員会を開催し、IIHOE(人と組織と地球のための国際研究所)代表者の川北秀人氏から「社会的課題の中期展望と課題解決に果たすべき企業の役割−日本と世界の2020年を俯瞰して」をテーマに話を聞くとともに意見交換を行った。あわせて、「2008年度社会貢献活動実績調査結果(案)」の審議を行い、承認を得た(調査結果の概要は2010年1月1日号に掲載予定)。

■ 川北氏講演概要

講演する川北氏

これまでの20年とこれからの20年は違う。2030年の日本は、高齢者率が30%を超え、生産年齢人口(15〜64歳)は現状から2割近く減り、65歳以上の高齢者人口はさらに増加する。高齢者人口についてはすでに、1990年からこれまでの間に2倍近くになっている。

バブル絶頂期には生産年齢人口5.5人で1人の高齢者を支える構造だったが、2030年には1.8人で1人の高齢者を支えなければならない。加えて、60〜70年代につくった橋梁や上下水道、道路などのインフラも補修期に入るなど、社会的コストはさらに増大する。

日本経済を支えるためには、介護しながら働き続けることのできる企業が増えていかなければならないし、性別や障がいの有無を越えて就労を進めるとともに、早期退職の回避やワーク・ライフ・バランスの最適化による「労働生産性」の向上が不可欠である。地球規模では、温暖化の進行や生物多様性の急速な破壊、デジタル・デバイド(情報格差)の影響の顕在化、テロ対策など安全に対するコストの高まり、資源価格の高騰などが社会的課題としてさらに重視されるだろう。

2010年代を戦い抜くには、こうした静かな社会変化を見逃さず、先手を打って対応しなければならない。「日本の100年に一度」の試練はまさにこれからである。企業は、社会貢献戦略の基本軸として、他社と比べてどうかという相対優位ではなく、「ウチの会社らしい」という絶対的な存在感を持つべきである。本業だけでは実現できない「社是の精神の具現化」を社会貢献として行うことや、「従来の本業の延長」としての活動、「未来の本業のための基盤整備」としての投資を戦略的に組み合わせることが重要である。

日本企業は社会貢献活動に真摯に取り組んでいるが、今後は「慈善的な配分」から「戦略的な投資」の側面をより重視して、NPOとの協働等を通じて社会的責任を果たしていることを世界に向けて情報発信すべきである。

【政治社会本部】
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