日本経団連タイムス No.2978 (2009年12月15日)

中南米地域駐箚大使との懇談会開催


日本経団連は11月26日、東京・大手町の経団連会館で中南米地域に駐在している大使との懇談会を開催した。懇談会には21カ国の大使が参加し、官民の連携強化をテーマに、主要国の最新の状況報告に引き続き、官民連携セッションにおいて意見交換を行った。

佐々木幹夫・中南米地域委員長のあいさつに続き、外務省の佐藤悟・中南米局長から、新政権の中南米重視の外交方針と、経済危機のなかで中南米地域との関係を強化するための官民連携の重要性について言及があった。また、中南米は5億人を超える成長市場であり、食料、資源、エネルギーの供給源として、日本とは経済的補完関係にあることに加え、日系人の活躍等もあり、重要なパートナーであると強調した。加えて、鳩山政権の重要政策である気候変動や核軍縮の分野でも方向性は一致していると述べた。一方、中南米における資源ナショナリズムの動きについて、政府の関与が大きい中南米では、官民が連携して政府へ働きかけることが必要であると述べた。また、来年1月に外務省が東京で主催するアジア中南米協力フォーラム(FEALAC)では、中南米とアジア間の経済活動の活性化のために議論をリードしていきたいとの考えを示した。

島内憲・駐ブラジル大使は、ブラジル経済はV字回復を遂げるなか、ワールドカップやオリンピックでさらに回復に弾みがつくとの見通しを述べた。また、高速鉄道やモノレール等のインフラ整備、環境ビジネス等の分野で日本の期待が高いと述べた。一方、来年の大統領選挙については、与野党が拮抗しているが、どちらが政権をとっても政策転換に大きな変化はないとの見方を示した。今年、2回開催された日伯貿易投資促進合同委員会に関しては、日伯間の課題を解決するこのメカニズムにおいて、今後も官民が連携して対応していきたいと述べた。

小野正昭・駐メキシコ大使からは、米国市場への依存ゆえに、経済危機の影響が非常に大きいこと、経済連携協定(EPA)の再協議に関しては、メキシコが農産品の自由化に固執しているため、見直しには時間を要するという見方が示された。

石田仁宏・駐アルゼンチン大使は、アルゼンチン政府は債務問題の解決に向け、民間債務の借り換えを実施した上で公的債務に関するパリクラブへ対応していく方針であり、今後の動向を見守りたいと述べた。

寺澤辰麿・駐コロンビア大使は、投資協定交渉は合意に至るまでには時間がかかるとの見通しを述べた。来年の大統領選挙については、ウリベ大統領がまだ出馬の意向を明言していないが、三選には憲法改正が必要で、そのための国民投票法が憲法裁判所で審査中であると述べた。

下荒地修二・駐ベネズエラ大使は、チャベス政権が進める国有化政策が電力、通信等の分野に加え、セメント、鉄鋼、石油化学、銀行等の分野へも拡大しているが、自動車産業は対象となっていないため日本への影響は限定的であると述べた。また、日本企業の保護について官民が連携してベネズエラ政府に働きかけていきたいと述べた。

林渉・駐チリ大使は、今月の大統領選挙について、与野党のどちらが勝利しても基本的な政策に違いはないと述べ、二国間関係については、2007年のEPA締結により08年の直接投資が10倍以上に伸びるなど、投資環境が改善していることを強調した。

目賀田周一郎・駐ペルー大使は、ガルシア大統領は非常に親日家であり日本に対する期待が大きいので、早期にEPAを締結し、日本からの投資を増やすなど期待に応えていきたいと述べた。

田中和夫・駐ボリビア大使は、レアメタルなどの鉱物資源や、天然ガス資源に恵まれているボリビアの経済情勢は好調である一方、外資系企業の国有化などの国の関与が強まっていると説明し、この動きを警戒した欧米諸国が投資を控えている今こそチャンスととらえ、日本企業が参入するべきだと述べた。

官民連携セッションでは佐藤局長が、官民対話の枠組みとして、ブラジルとの間で日伯貿易投資促進合同委員会が設置されたことに続き、ベネズエラとの間では、エネルギーに関するワーキング・グループを設置したことを紹介した。また新たな分野として、日本の技術力を活かせるデジタルテレビや、高速鉄道・モノレールなどのインフラ整備のほか、リチウム等の資源開発について官民が連携して取り組みたいと述べた。特に、環境分野については、鳩山イニシアチブで支援が進むこともあり有望な分野であると強調した。

一方、日本経団連側から、ODAの一般会計予算が減少し続けるなか、ODAを効率的かつ戦略的に活用するために官民が意見交換を行う場を設けてほしいという意見が出された。

日本とメルコスールとのEPA締結を望む意見に対して、島内駐ブラジル大使は、双方に事情があり進んでいないという見方を示した。

ブラジルの資源ナショナリズムの高まりを懸念する意見について、島内大使は、ブラジル政府は外国からの投資の重要性を認識しているので、そのような動きがエスカレートすることはないとの見方を示した。

最後に、チリの電力不足について林駐チリ大使は、海外からの液化天然ガス(LNG)の輸入や火力発電所建設が進められているが、今後代替エネルギー分野で日本の技術力を活かせるとの可能性があると述べた。

【国際協力本部】
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