日本経団連タイムス No.2980 (2010年1月14日)

競争法コンプライアンス体制に関する研究会報告書(案)で説明会


日本経団連は12月11日、東京・大手町の経団連会館で、経済産業省の「競争法コンプライアンス体制に関する研究会」が取りまとめた報告書(案)の説明会(司会進行=佐久間総一郎経済法規委員会競争法部会長)を開催し、経済産業省の夏目健夫競争環境整備室長から、報告書(案)の内容について説明を聞いた。

夏目室長からの説明概要は次のとおり。

■ 問題意識

近年、欧米等各国の競争当局は、競争法の執行を強化する傾向にあり、わが国企業に対しても、カルテルを行ったとして、多額の罰金や制裁金を課す事例も発生している。企業が競争法違反を問われた場合、財産的損失を被るだけではなく、長年の努力により築いた社会的評価を著しく損なうことになる。したがって、グローバルに事業を展開する企業のみならず、国内を中心に活動する企業においても、海外競争法が適用される可能性があることに留意し、海外競争法を踏まえた競争法コンプライアンス体制を整備する必要がある。

また、事業者団体は、競合他社同士が接触する場であるという点で、競争法上のリスクが必然的に高いにもかかわらず、わが国においてはいまだコンプライアンス体制が整備されているとは言い難い状況にある。事業者団体が、その活動において、競争法上の疑義を招くことなく、社会的に意義のある活動を続けていくためには、競争法コンプライアンス体制を整備し、会員が安心して活動に参加できるようにする必要がある。

そこで経産省は、「競争法コンプライアンス体制に関する研究会」を立ち上げ、国際的な競争法執行強化を踏まえた企業・事業者団体のカルテルに係る対応策について企業・実務家等を交えて検討を行い、さる12月11日、海外競争法の執行状況や企業・事業者団体の先駆的事例等の紹介等を盛り込んだ報告書(案)を取りまとめた。報告書(案)については、広く国民が競争法上のリスクを認識し、コンプライアンス体制の整備の必要性を理解してもらえるよう、パブリック・コメントを経たうえで、広く普及・啓蒙活動を行っていく。

■ 報告書(案)の概要

(1) 企業のカルテルに関する競争法コンプライアンスに係る取り組み

わが国企業が、カルテルに関する競争法コンプライアンス体制を整備するにあたっては、「違反行為をしない」ことはもちろんのこと、「違反行為をしたと疑われる状況をできるだけ減らす」ことを念頭に置いて、体制整備をすることが望ましい。特に、(1)事業者団体活動を含む、競合他社との接触に関するルールの策定・実施(2)統計情報の提供・利用に関するルールの策定・実施(3)役職員に対する、競争法違反の危機感を持たせるような研修の実施――の体制整備をすることが重要である。

(2) 事業者団体のカルテルに関する競争法コンプライアンスに係る取り組み

わが国事業者団体においては、競合他社同士が接触する場である事業者団体は、競争法上のリスクが少なからず存在することを認識したうえで、特に、(1)会合の運営に関するルールの策定・実施(2)統計情報の収集・管理・提供に関するルールの策定・実施――の体制整備をすることが重要である。
なお、報告書(案)で提案されている取り組みを行えば、確実に競争法違反とならないということではないため、各企業・団体においては、それぞれの事業活動内容に応じたコンプライアンス体制を整えていただきたい。

【経済基盤本部】
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