日本経団連タイムス No.2981 (2010年1月21日)

第63回評議員会開く

−御手洗会長、持続的経済成長実現などを強調


第63回評議員会であいさつする岡田外相

日本経団連は12月24日、東京・大手町の経団連会館で第63回評議員会を開催し、御手洗冨士夫会長、米倉弘昌評議員会議長をはじめ副会長、評議員会副議長、評議員ら約400名が出席した。

冒頭、あいさつした米倉議長は、わが国が持続的に成長し新たな雇用を創出していくためには、当面の対策とともに、中長期的な視点に立った成長戦略が不可欠と指摘。電子行政の実現や農商工連携の推進、環境分野などでの取り組みを進めることなどが必要と述べた。

そのうえで、成長戦略の推進には政権との対話が不可欠と指摘。経済の生きた姿を踏まえた提言を国民目線に立って発信することの重要性を訴えた。

御手洗会長はあいさつのなかで、わが国経済がデフレの進行に加え、円高や厳しい雇用情勢など、予断を許さない状況にあると指摘。財政・金融両面からの切れ目ない景気刺激策を求めるとともに、企業としても、新たな需要の創出に努めることで、一刻も早く自律的な回復軌道に乗せることが重要と述べた。さらに税・財政・社会保障の一体改革、少子化対策により持続的な経済成長と安心・安全社会の実現を図ることが必要と強調した。

そのうえで、日本の強みを活かして新たな成長を実現する視点が重要だと指摘し、世界最先端の環境技術による環境と経済の両立やICTの深化と利活用による効率化、道州制を通じた地域活性化の基盤整備、イノベーションの促進や産業の創出などへ取り組む必要があると言及した。

また、来賓の岡田克也外務大臣が、アジア全体が発展するなかで日本も発展していくと強調するとともに、経済連携協定の推進、地球温暖化対策、日米関係等の諸課題にしっかり取り組むとあいさつした。続いて、直嶋正行経済産業大臣が、緊急経済対策等により経済を自律的な回復軌道に乗せるとともに、成長戦略を取りまとめ、アジアの内需を日本の内需とすること、環境対策をチャンスにすることにより、国民一人ひとりが成長を実感できるようにしたいと述べた。原口一博総務大臣は、就任してすぐに、御手洗会長と地域主権改革と道州制推進、電子政府の実現やICTの推進に向けたタスクフォースを設置したことを披露し、結論が出たものはすぐに実行すると決意を述べた。

「2009年の日本経済 回顧と挑戦」/白川日銀総裁講演

続いて白川方明日本銀行総裁が「2009年の日本経済 回顧と挑戦」と題して講演した。
白川総裁は、今回の景気後退の要因を、(1)2000年代に米欧を中心に蓄積された過剰(家計の債務、企業の生産能力、金融機関の不良債権)を処理することによる下押し圧力(2)金融危機によるパニック的な経済・金融活動の収縮――の2つだと指摘。世界経済は新興国の高成長と先進国の持ち直しにより回復基調を維持するものの、不確実性はなお高いと指摘した。

■ 日本経済の情勢

わが国の景気は海外経済の回復と内外の在庫調整の進捗により輸出、生産は回復に転じたもののその水準は依然低く、政策効果による部分も大きいことから自律的回復力はまだ弱いと指摘。雇用、設備の調整圧力が残存する10年度半ばまでは、持ち直しのペースは緩やかになるとの見通しを示した。
一方、消費者物価については、マクロ的な需給バランスの改善に伴い、下落幅は徐々に縮小していく方向にあると述べる一方、経済の持ち直しのテンポが緩やかなものにとどまる場合、物価下落圧力もある程度長期間にわたって残存すると指摘。デフレの根本的な原因は経済全体の供給能力に比べて需要が弱いことであり、短期的な需要創出努力と生産性向上を反映した中長期的な所得増加期待の達成の2つの対応が必要との見方を示した。

■ 日本銀行の金融政策運営

白川総裁は、日本銀行を含む主要先進国の中央銀行が実施した施策を、金融危機がもたらした急性症状に対する対応と、バランスシート調整という慢性症状に対する対応に整理。そのうえで、日銀の最も重要な責務は金融市場の安定確保であり、これが損なわれることが懸念された場合、迅速、果断に行動する態勢を整えていると述べた。また、今後も緩和的な金融環境を維持し、日本経済がデフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長軌道に復帰することを粘り強く支援するとの方針を示した。

■ 日本経済の取り組むべき挑戦

白川総裁は、今回の世界的な金融危機において、わが国の金融システムは相対的に頑健性を維持した一方、経済活動の落ち込みは大きかったという事実を指摘した。そのうえで、今回の経験からわが国が引き出すべき教訓として、外需依存から内需主導への抜本的な転換が必要ということではなく、世界経済の持続的成長を目指すことが重要であると述べた。そして、わが国経済としては、グローバル経済の成長の果実を取り込むことと、国内需要拡大の基盤をつくることがともに重要と指摘した。
最後に日本経済の挑戦として、(1)ニューノーマルへの移行(2)グローバルな経済環境に即応した各種制度の見直し(3)グローバルなルールづくりへの積極的な参加(4)各種セーフティーネットの整備(5)根拠なき悲観主義ともいうべき気分からの脱却――の5項目を挙げた。

【総務本部】
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