日本経団連タイムス No.2981 (2010年1月21日)

今後の中国経済の課題と展望で議論

−21世紀政策研究所の中国研究チームがシンポジウムを開催


日本経団連の21世紀政策研究所(御手洗冨士夫会長、宮原賢次理事長)は12月14日、東京・大手町の経団連会館で「国際金融危機後の中国経済‐来年のマクロ経済政策を巡って」と題するシンポジウムを開催した。同研究所では、昨年度から中国研究プロジェクトを開始、今年は2年目に当たる。初年度の研究成果『外資政策と日系企業』は、昨年9月に出版されている。

同シンポジウムは、12月5日から7日に開催された中国の中央経済工作会議での2010年の経済政策の決定方針を踏まえ、今後の中国経済の課題と展望を議論することを目的に開催された。開会あいさつでは、同研究所研究諮問委員の渡辺利夫拓殖大学学長から、早期回復を達成した中国経済が内需拡大と構造調整の2つの課題にどう取り組むか、引き続き注視する必要があるとの発言があった。

報告セッションでは、日中産学官交流機構の田中修特別研究員から「マクロ経済政策の転換はあるか」と題して報告が行われた。中央経済工作会議については、成長維持のスタンスを継続する一方で経済構造調整や社会の安定を重視しており、最大の特徴は「経済発展方式の転換」という記述が盛り込まれた点であると指摘。今後は、投資・輸出依存から内需型経済へのシフト、産業間のバランスのよい発展、科学技術の進歩や労働者の質的向上、管理のイノベーションの進展等を目指すとの説明があった。

大東文化大学の内藤二郎准教授からは「再分配問題と『新たな公共』」と題して報告が行われた。内藤氏は、地域格差が深刻ななか、再分配政策が注目されているが、税制・社会保障制度は未整備で、国有企業優遇策や地方の既得権構造が再分配効果を減退させていると発言。一方、市民社会意識が芽生え始めており、政府と市場をつなぐ「新たな公共」の核となるNPOやNGO、さらにはCSRの展開力と結び付けることで有効なアプローチが期待されると述べ、具体的事例として内モンゴルでの地域再生プロジェクトの紹介があった。

パネル討論では、専修大学の大橋英夫教授がモデレーターを務め、拓殖大学の朱炎教授、アジア経済研究所の寳剱久俊研究員が議論に加わり、中国経済の抱えるさまざまな課題が多面的に浮き彫りにされた。今後の展望については、「2010年の経済成長率は9%程度と引き続き堅調が予想され、経済過熱やバブルの可能性が高まる。財政政策は早期引き締めに警戒的な国家発展改革委員会の発言権が強く、人民銀行の金融政策の転換も遅れ気味になるリスクがある。成長の持続性については、当面8〜10%の成長は可能だが、成熟化やその他の制約要因で次第に鈍化傾向に向かう。そうしたなかで、日本企業としては過剰生産問題の状況を注視する必要がある。中国政府の外資企業に対するスタンスは、技術移転か雇用拡大で貢献を求める姿勢で変わらない」というものであった。

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今年度の研究成果は勁草書房から7月に刊行の予定。同シンポジウムの詳細はホームページ(URL=http://www.21ppi.org/archive/index.html#diplomacy)を参照。

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