日本経団連タイムス No.2982 (2010年1月28日)

政府の海賊対策や離島の保全・管理で説明を聞く

−海洋開発推進委員会総合部会


日本経団連は15日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、内閣官房総合海洋政策本部事務局の岡西康博内閣参事官から「海洋の安全・安心の確保」と題し、政府の海賊対策や、離島の保全・管理などについて説明を聞き、意見交換を行った。
岡西参事官の説明要旨は次のとおり。

■ 海賊対処法の成立

2007年から、ソマリアの海賊へどう対処するかが世界的に大きな問題になった。08年4月に、「高山」という日本船が襲撃され、12月から内閣官房で海賊対処法の策定作業を始めた。昨年3月13日に同法案は閣議決定され、7月24日に施行された。
ソマリアの海賊はロケットランチャーなど重装備をしてハイジャックをし、事案は、07年44件、08年111件、09年215件と倍増している。
わが国の国際貨物輸送における海上輸送の割合は99.7%であり、海上輸送の安全確保は安全保障上も重要である。ソマリア沖のコンテナ荷動きは全世界の約2割を占めている。このうち、わが国の通行隻数は年間約2千隻であり、世界全体の約11%である。

■ 国際条約上の位置付けと国連の動き

公海は自由が基本であり、船舶は旗国の領土のようなもので、他国はその船に管轄権を行使できない。これが旗国主義の原則である。海賊は唯一の例外であり、公海上でも、海賊船舶であれば第三国が実力を行使しても構わないとする規定が国連海洋法条約にある。海賊対処法はこの条約に基づいている。
08年6月2日の国連安保理決議では、海賊行為等の抑止を目的としてソマリア領海に進入することと、ソマリア領海内で武装強盗行為の抑止のためにあらゆる必要な措置を可能にすることが決定された。

■ 海賊対処法のポイント

海賊対処法では、船、財物、船員の3つの法益を侵害した場合のみ、海賊行為に当たる。あらゆる船舶の海賊行為に対処でき、国際的にも先進的である。
海賊対処法の目的は、海上における公共の安全と秩序維持を図ることである。海賊対処行動については、自衛隊の派遣手続きを明確化して、自衛隊法上の海上警備行動よりも対象船舶を広げ、自国だけでなく他国の船も守れるようにした。武器使用権限を整備し、国会の関与についても明確に規定した。
国際平和協力法、テロ対策特措法、イラク支援特措法、補給支援特措法では、自衛隊は国際協力を前提として派遣されている。一方、海賊対処法での活動は、公共の秩序の維持を目的とする警察活動である。公海上であるが、職務行為として武器使用が明確に規定された。

■ 離島の保全・管理

昨年12月1日に、「海洋管理のための離島の保全・管理のあり方に関する基本方針」を策定し、通常国会に、離島に関する法案を提出する予定である。
南鳥島の排他的経済水域面積は約43万平方キロメートル、沖ノ鳥島は約42万平方キロメートルである。これらは日本の国土面積38万平方キロメートル以上であり、これを確保し海洋における活動拠点とするため、2つの島について、国が直轄管理する港湾を整備する法案を成立させたい。

【産業技術本部】
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