日本経団連タイムス No.2982 (2010年1月28日)

エグゼクティブ会計戦略セミナーを開催


セミナーで講演する中島氏

日本経団連事業サービスは12日、東京・大手町の経団連会館で日本経団連と連携し、「エグゼクティブ会計戦略セミナー」を開催した。同講座は、新日本有限責任監査法人の全面的協力を得て、財務担当役員を対象に3回シリーズで行われる。第1回となる今回は、新日本有限責任監査法人シニアパートナーの中島康晴氏から、国際財務報告基準(IFRS)の導入が企業経営に与える影響について説明した。中島氏の説明概要は次のとおり。

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IFRSは金融マーケットにおける投資家への情報提供ツール(インベストメント会計)であり、従来の財政状況と経営成績を示すマネジメントのための会計とはそもそも基本的な考え方が異なる。IFRSの本質を理解するためには、個別の論点に入り込む前に、この基本的な考え方の違いから、利益の概念、包括利益の考え方、収益の認識基準、引当金の計上要件などの個別の処理の違いが導かれることを理解することが重要である。

このようにIFRSへの移行は会計の基本的な考え方そのものの変革をもたらすことから、経営者として慎重に検討しなくてはならない。まずはIFRSの本質や会社に与える影響について十分に検討し、会社としてのスタンスを明確にするべきである。また移行にあたっても、個々の項目について、経営実態にあわせた納得性という観点から吟味して、判断する必要がある。

なお、IFRSへの移行によって、持ち合い株式の解消や親子上場の廃止など日本型経営そのものが変革を迫られるという意見もみられる。しかし、会計に本当に経営そのものを変える力があるのかどうかについては、より慎重に考えなければならない。もっとも、IFRSの考え方はデュー・ディリジェンス(買収対象企業の調査)の考え方と共通点が多いため、IFRSの適用によって、会社は常に買収の緊張感にさらされる可能性があり、そういった意味で一種の意識改革を迫られることになる可能性はある。

【経済基盤本部】
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