日本経団連タイムス No.2983 (2010年2月4日)

今年の春季労使交渉めぐる諸問題について意見を交換

−連合との懇談会を開催/「若年者の雇用安定に関する共同声明」の確認、公表も


日本経団連(御手洗冨士夫会長)は1月26日、東京・大手町の経団連会館で日本労働組合総連合会(連合、古賀伸明会長)との懇談会を開催した。日本経団連からは御手洗会長はじめ、渡文明副会長、森田富治郎副会長、大橋洋治副会長、清水正孝副会長、西田厚聰副会長らが、連合からは古賀会長はじめ、会長代行や副会長、事務局長ら合わせて約40名が参加し、今年の春季労使交渉をめぐる諸問題について意見交換を行った。また、極めて厳しい状況となっている学生等の就職状況を踏まえ、緊急的な対応として、両団体の取り組みや、政府に求める対応を取りまとめた「若年者の雇用安定に関する共同声明」を確認、公表した。

連合との懇談会であいさつする御手洗会長

労使とも納得感を/御手洗会長が期待表明

懇談会の冒頭、御手洗会長はあいさつのなかで、厳しい経営環境が続くなかで行われる今年の労使交渉について、「自社の存続・発展と、従業員の雇用安定を最優先に考えながら、労使が十分に話し合い、自社の経営実態と支払能力を踏まえて、お互いに納得感が得られる着地点を見つけることが望ましい」との考えを示した。

連合の古賀会長は、わが国を取り巻く情勢、経済、雇用動向については日本経団連と大きな認識の違いはないと述べたうえで、「人材をコストとして見るのではなく、付加価値を生み出す源泉として投資することこそが、競争力を強化する源である」とあいさつした。

■ 意見交換

意見交換ではまず、春季労使交渉に臨むにあたっての基本的な考え方を双方が示した。連合側からは「短期的な利益性、競争性から、中長期的、持続的な成長・発展への認識転換(パラダイムシフト)が必要」であることや、従来の延長線上での賃金抑制論はこれからの社会ではマイナスになるとし、定期昇給の実施や賃金カーブ維持はしっかりやらなければならないとの意見が出された。

一方、日本経団連側からは、最大の経営資源である「人材」を守る観点から、「賃金より雇用を重視」する姿勢を強調。そのうえで「定期昇給制度のある企業においては、制度に則った昇給の実施を基本としつつ、業績が特に厳しい企業においては、いろいろな可能性を含めて交渉のテーブルに上ることもあり得る」と説明した。また、賞与・一時金については、業績を反映することが基本との考えを述べるとともに、多くの企業で厳しい業績結果を反映したものになるとの見通しを示した。

このほか、連合側からは、政策制度の取り組み強化の必要性や良質な雇用提供の重要性の言及に加え、非正規労働者の増大に関して、企業の短期的利益の追求、総額人件費の抑制、調整弁的な位置付けなどを要因として列挙したうえで、労使の社会的責任として同一価値労働同一賃金を目指して真摯に取り組むべきであるとの指摘がなされた。

日本経団連側からは、「現下の厳しい条件下でいかに雇用、処遇、企業の存続を両立していくかという問題の解決には時間が必要であるが、未来に向けてあるべき姿をつくり上げていくことも労使の使命である」との発言や、企業が600万人以上もの余剰雇用を抱えている現状、地域間格差の厳しい実態への理解を求める発言があった。

若年者の雇用安定に関する共同声明を了承

意見交換に続き、前回(09年11月27日)の懇談会で、両団体による共同の取り組みの検討が確認されたことを受けて事務局ベースで進めてきた検討結果を報告。第一に、両団体で雇用の安定・創出に向けた対策を検討していくこと、第二に、若年者の雇用安定について、大学生、高校生の就職内定状況が極めて厳しいことから、緊急的な対応として、企業と労働組合が取り組むことや政府に求める対応を取りまとめた「若年者の雇用安定に関する共同声明」を提案し、了承された。

最後のあいさつで古賀会長は、両団体は立場が異なり、意見・考え方の違いがあるが、「率直に意見交換できたことは非常に有意義であった」との認識を示した。御手洗会長も、労使は立場が違うため、方法論は異なるが、「雇用を安定させ、社会を安定させることが共通の目標」であり、「根底にある考え方は同じ」であるとし、今後も共同で取り組むべきものは取り組んでいきたいと結んだ。

【労働政策本部】
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