日本経団連タイムス No.2984 (2010年2月11日)

海洋を利用するCO2貯留・隔離技術で説明を聞く

−海洋開発推進委員会総合部会


日本経団連は1月28日、東京・大手町の経団連会館で海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、地球環境産業技術研究機構(RITE、ライト)のCO2貯留研究グループの村井重夫グループリーダーから、海洋を利用するCO2貯留・隔離技術について説明を聞き、意見交換を行った。説明の要旨は次のとおり。

■ RITEの概要

RITEは、地球再生計画を具体化するため、革新的な環境技術の開発と二酸化炭素吸収源の拡大を国際的に推進する中枢機関として1990年7月に設立された。

■ CCS(CO2回収・貯留)について

化石燃料の燃焼とセメント生産により、年間235億トンのCO2が排出されている。そのうち陸域が37億トンを、海洋が81億トンを吸収し、残りの大体半分の117億トンが大気に蓄積されて、温暖化がもたらされている。CO2を地中へ貯留、海洋に隔離するのが、CCSのコンセプトである。
RITEの評価では、陸域で20兆トン、沿岸海域で5兆トンのCO2貯留が究極的に可能である。そのうち10%の貯留が可能であるとしても、世界のCO2排出量100年分程度となる。

■ CO2海洋隔離技術の開発状況

海洋隔離技術は、海洋の膨大なCO2吸収能力を活用し大気中のCO2濃度の急激な上昇を抑えることを目的としている。位置付けは、CO2分離・回収・貯留全体プロジェクトの一環であり、2020年ころからの実用化を想定している。隔離事業自体は利益を生まず、民間のインセンティブが期待できないので、国の関与が不可欠である。
海洋隔離想定海域においてCO2の希釈溶解が生物に与える影響の調査、海中におけるCO2挙動の観測を行った。日本の年間排出量は約13億トンであるが、年間7500万トン(約5%)のCO2海洋隔離のケーススタディーが行われ、海洋生態系への影響は少ないと評価されている。なお、コストは、CO21トン当たり8712円で、1トン7300円の地中貯留より若干高い。分離・回収、液化、船輸送のコストを半減する必要がある。
今後は、本格的な海洋実験が必要であり、そのための国際的な合意や法的整備により、海洋隔離の実用化につなげたい。

■ CO2海域地中貯留技術の開発状況

新潟県長岡市の南長岡鉱山で、CO2地中貯留を実験し成功した。中越地震や中越沖地震でもCO2は漏れず、貯留の基礎的知見を習得できた。研究成果を安全評価手法の開発や全国賦存量調査などに活用するためには、大規模実証やコスト低減などが課題である。こうした研究開発や事業化のための調査を目的に、08年5月に日本CCS調査株式会社が設立されている。
また、ノルウェー、オーストラリア、台湾のほか、世界各国の発電所にもCCSのプロジェクトや計画がある。

【産業技術本部】
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