日本経団連タイムス No.2985 (2010年2月18日)

提言「新たな食料・農業・農村基本計画に望む」公表

−農業の成長産業化に向けた課題提示/道州制見据えた地域の個性と強み活かした取り組みなど


日本経団連は16日、提言「新たな食料・農業・農村基本計画に望む」を公表した。

農政関連の提言としては、昨年3月に、世界的な食料需給の不安定化、耕作放棄地の増大や農業従事者の高齢化など国内の食料生産基盤の崩壊の危機等を踏まえ公表した「わが国の総合的な食料供給力強化に向けた提言」がある。

今回の提言は、先の提言を踏まえつつ、昨年末の改正農地法の施行や米を対象とした「戸別所得補償モデル対策」の実施決定といった最近の農政の動向を受け、経済界の考え方を整理したもの。今年3月の政府の新たな「食料・農業・農村基本計画」の策定、さらには6月の政府の「新成長戦略」の策定を視野に、わが国の総合的な食料供給力を強化しつつ農業を成長産業として確立するための方策を提示している。

提言では、まず基本的考え方として、食料安定供給体制の確立は国家存立の基盤であり、そのためにわが国は国内の食料生産基盤の維持・強化と国民・市場ニーズに対応した開発から生産・流通・販売に至る一体的取り組みを進め、国内自給力の向上を図っていくべきとした。また、こうした取り組みにより、現政権が目標に掲げる食料自給率50%を実現したとしても、残る50%は海外に依存せざるを得ないことから、海外との連携・協力を強化し食料の安定的な輸入の確保にも取り組むべきとしている。

また、新しい「食料・農業・農村基本計画」を通じて農業を成長産業として確立するため、道州制を見据えた地域の個性と強みを活かした取り組みを進めるととともに、国全体として問題意識や課題を共有して改革方策を確立し速やかに実行することを求めている。

さらに、経済界としても、農業界との連携・協力を一層推進し、農産物の高付加価値化や販路拡大など農業イノベーションの創出に貢献するとの決意を示している。

次に、提言の各論では、第1の柱である「食料生産基盤の強化」で、効率的・安定的な農業経営構造を確立するため、昨年末に施行された改正農地法の現場での運用について手続きの公正性・透明性を確保すること、2010年度に実施される戸別所得補償モデル対策に加え、担い手への農地集約の一層の支援や農地の大区画化等の基盤整備を着実に推進することなどを求めている。

また、第2の柱である「国民・市場ニーズへの対応」では、戦略的な産業間連携への支援として、農産物の輸出促進に対する政府の戦略的な支援や主要農産物の加工適性の向上等の農業分野の研究開発の推進等、第3の柱である「国際連携・協力の推進」では、WTO・EPA交渉への積極的な対応や多様な農業の共存を可能とする広域経済連携の検討等を求めている。

日本経団連では今後、関係者との意見交換等を通じて同提言の実現に努めるとともに、セミナーの開催や事例集の作成等による優良事例の紹介等を通じて、農業界との連携・協力の一層の推進を図る予定である。

【産業政策本部】
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