日本経団連タイムス No.2985 (2010年2月18日)

観光立国を担う人材の育成に向けて〜産学官の連携強化を

−観光分野の成長戦略提言第一弾公表


日本経団連は16日、提言「観光立国を担う人材の育成に向けて〜産学官の連携強化を」を公表した。同提言は、政府の「新成長戦略」策定に対応する観光分野の成長戦略提言の第一弾として取りまとめたものである。観光産業の発展のためには人材育成が不可欠との認識に立ち、実効ある観光政策の立案および業界の高度化を推進できる有能な人材の育成と活用について、具体的な施策を提言した。提言の概要は、次のとおり。

■ 観光分野における人材育成の現状と課題

グローバル化やローカル化など観光産業を取り巻く環境の変化は、今後、観光に携わる人材の育成・活用に大きな影響を与えていくものと思われる。グローバル化に伴う海外事業の拡充が見込まれるなかで、現地スタッフの質的向上が課題である。また、ローカル化については、外国人観光客の関心が、大都市のみならず地方にも向かうなか、地域の実情に精通した人材が求められている。
一方で、観光分野における人材の供給源と目される、観光系学部・学科からの観光分野への就職率は低調であり、より実需にあった教育内容の充実に向けて、産学官連携が求められる。

■ 観光に携わる人材の育成・活用

前述のような課題認識のもと、地域の観光振興策を立案・実施する人材の育成と観光業に携わる人材を育成するため、以下の方策が有効である。
地域の観光振興策を立案・実施する人材としては、地方自治体の観光担当部局の職員、観光協会職員、NPO関係者等が考えられる。地域独自の魅力を発揮するには、地域に根差した人材を地域が主体的に育成・活用することが重要である。こうした観点から、観光系学部・学科における地域の専門家の育成、自治体等によるインターンシップの拡充、各自治体における観光専門職の創設、自治体・観光協会・NPO・企業等の間での人材交流、地域の観光振興に取り組む意欲のある若者やシルバー人材を育成・活用する人材バンクの創設、通訳案内士の活用促進に向けた制度改善、インバウンド誘致における在外公館等の人材を活用することが必要である。
観光業に携わる人材については、マネジメント力、企画力、行動力に富んだ経営人材および企画・営業・広報等の実務人材を育成するために、企業と大学の一層の協力が求められる。具体的には、観光系学部・学科における実務教育の拡充、そのための企業による社員の講師派遣、寄附講座の充実、インターンシップの拡充、観光業界と経営大学院によるマネジメント研修プログラムの共同開発、観光MBAの開設、また、東アジア大交流時代を見据えて、観光に関心のあるアジア人留学生の積極的な活用が求められる。

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なお、今後、日本経団連は、人材育成以外の要素も含めた、観光分野の包括的な成長戦略を改めて提言する予定である。

【産業政策本部】
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