日本経団連タイムス No.2985 (2010年2月18日)

国際海上コンテナの安全輸送と物流円滑化へ提言

−安全確保と競争力強化、両立の必要性を指摘/産業界の考え方を取りまとめ


日本経団連は16日、提言「国際海上コンテナの安全輸送と物流円滑化に向けて」を発表した。これは、政府が今次通常国会に、国際海上コンテナの国内輸送の安全性向上に関する法案の提出を予定していることから、急遽、産業界の考え方を取りまとめたものである。

同法案提出の動きは、昨年5月、国際海上コンテナを牽引するトレーラーの事故が相次いだことがきっかけとなっている。昨年12月には、三日月大造国土交通大臣政務官を中心として物流関係者が参加する検討会が設置され、作業が進められてきた。16日、開催された第3回検討会で最終法案骨子が提出されたが、輸出入されるコンテナについて、中身や重量、積み付け情報のトラック運転者への伝達を荷主に義務付け、違反者には罰則を科す見込みである。

法律案は、世界に類例を見ないものであり、運用によっては、食料品、衣類をはじめとするコンテナ貨物が港に滞留し、国民生活に甚大な影響を及ぼすことが懸念される。

そこで提言では、安全確保を最優先で考え、関係者が総力を挙げて事故ゼロに向けて取り組まなければならないとの認識を示したうえで、安全確保と競争力強化との両立、事故原因の徹底究明とそれに基づいた効果的な対策の導入が必要であることを指摘。さらに、情報伝達の義務化と罰則規定が安全確保につながらないとして、導入を見送るよう求めている。

次に安全確保に向けた対応策として、(1)コンテナの安全輸送を保証する速度制限と安全ロックの確認手順の導入、安全教育の一層の推進(2)過積載、偏荷重の発見のため、円滑な物流を阻害することなく疑義あるコンテナの重量を計測できるようしかるべき場所に計測器を政府予算で設置すること(3)政府が諸外国に対して積み付け情報の提供に関する国際的ルールの策定を働きかけること(4)最新技術による研究と実証実験を重ねること――を提案している。

こうした日本経団連の考え方については15日、渡文明副会長、宮原耕治運輸・流通委員長が前原誠司国土交通大臣に申し入れを行ったほか、丸山和博運輸・流通委員会物流部会長が三日月政務官に説明するなど、直接、働きかけを行っている。

本件は、商社など荷主といわれる企業だけの問題ではない。トラック事業者、港運、海貨、フォワーダー、船社といった運輸関係企業の事業はもとより、製造業、フードサービス業、小売業にとっても看過できない問題を招くおそれがある。

日本経団連は、法案作成の動きを注視しつつ、安全確保と競争力強化を両立させる観点から、引き続き政府・与党に働きかけを行っていくとしている。

【産業政策本部】
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