日本経団連タイムス No.2986 (2010年2月25日)

政府の子育て支援施策の動向聞く

−子ども手当法案の概要など、厚労省担当官との意見交換も/少子化対策委員会企画部会


日本経団連の少子化対策委員会企画部会(高尾剛正部会長)は9日、東京・大手町の経団連会館で会合を開催し、厚生労働省雇用均等・児童家庭局の担当官から子育て支援に関わる各種施策の動向について、説明を聞き、意見交換を行った。概要は次のとおり。

1.子ども手当法案の概要

政府は1月29日、「平成22年度における子ども手当の支給に関する法律案」を閣議決定した。子ども手当は、中学校修了までの児童を対象に、1人につき月額1万3000円を支給するもので、所得制限は設けない。子ども手当の一部に現行の児童手当(費用負担は国・地方・事業主)を組み込み、支給範囲・水準を拡充した部分については国が負担する仕組みである。今回の法案は、2010年度の支給に限った時限立法であり、11年度以降については、今後検討を進め、来年の通常国会に新たな法案を提出することとしている。

なお、放課後児童クラブなどの児童育成事業は、これまで事業主拠出金を原資として実施しているが、2010年度についても継続することとなった。10年度における児童育成事業の予算総額は、前年度(560億円)から204億円増額し、764億円である。内訳をみると、出産育児一時金の給付引き上げに関わる80億円の増額、放課後児童クラブ等の拡充に伴う40億円の増額が大きい。また、一般会計と特別会計の事業の整理を行った結果、一般会計で負担していた延長保育事業等を、児童育成事業として実施することとなったことから、70億円程度増額している。

2.保育制度改革をめぐる動き

今般、政府は2010年度以降の子育て支援施策の基本指針として「子ども・子育てビジョン」を策定した。ビジョンは、社会全体で子育てを支えるとの基本理念のもと、子どもと子育てを応援する社会を目指し、子育て家庭への経済的支援や保育サービス等の基盤整備など総合的な支援策を示している。ポイントは、5年後の数値目標として、待機児童の解消に向け、女性の就業率向上に伴う潜在的な保育ニーズに対応した保育サービスの整備目標を明確化している点である。

また、昨年12月8日に閣議決定された「明日の安心と成長のための緊急経済対策」では、幼保一体化を含めた保育分野の制度・規制改革を進めることとした。これに基づき、行政刷新担当大臣と少子化担当大臣のもと、新たに設置された「子ども・子育て新システム検討会議」において、具体的な検討を進め、今年の6月をめどに基本的な方向を固める予定である。

■ 意見交換

引き続き行われた意見交換では、委員から、「保育サービスに対するニーズは地域ごとにかなり差があるため、中央主導でなく地方が主体的に取り組むことが必要」「児童育成事業の事業内容や予算規模を決定するにあたって、費用負担者である事業主側の意見を反映してほしい」などの発言があった。また制度改革を裏付ける財源確保や費用負担の検討状況の確認とともに、「企業は従業員の両立支援や就業継続に関わるコストを負担していることをよく考慮してほしい」との要請があった。

これらの意見に対し、厚労省の担当官からは「財政が厳しい地方の判断に任せると保育所の整備が抑制されてしまうため、国家戦略として国全体が取り組んでいくことが必要」「事業主側の意見を反映させるための特別な枠組みはないが、折に触れ、こうした機会を設けて、意見を活かしていきたい」とのコメントがあった。さらに、「制度改革に関わる費用負担の問題は、国民的議論のもと社会的合意を得ていくことが必要」との認識が示された。

【経済政策本部】
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