日本経団連タイムス No.2986 (2010年2月25日)

著作権法めぐる現状と今後の展望で意見交換

−知的財産委員会著作権部会


日本経団連は10日、東京・大手町の経団連会館で知的財産委員会著作権部会(和田洋一部会長)を開催し、文化庁の永山裕二著作権課長から、「著作権法をめぐる現状と今後の展望」と題し、今年度の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会で検討が進められてきた権利制限の一般規定(いわゆる「日本版フェアユース規定」)の導入の検討を中心に説明を聞き、意見交換を行った。

まず、権利制限の一般規定については、法制問題小委員会の下に設置された権利制限の一般規定ワーキングチームにおいて1月に取りまとめられた報告書に基づき説明が行われた。権利制限の一般規定とは、一定の包括的な考慮要件を定めたうえで、権利制限の適用の可否は裁判所の判断に委ねる方式であり、米国著作権法においては「フェアユース」というかたちで導入されている。

報告書においては、権利制限の一般規定の導入の是非については結論を出していないが、個別規定の解釈等による対応の限界、一般規定の導入による経済的効果の有無、諸外国での導入の状況等の観点から、権利制限の一般規定を導入する必要性について検討を行っている。さらに、法制問題小委員会で利用者側から挙げられた著作物の利用行為を5つに分類したうえで、権利制限の一般規定を導入するとした場合にその対象とすることが適当と考えられる利用類型や、関連条約との整合性等について、詳細な検討を行っている。

権利制限の一般規定の問題については、3月中を目途に中間まとめとして一定の結論を得るとともに、パブリックコメント等を経て秋ごろまでにまとめを行い、最も早ければ来年の通常国会に、改正法案を提出する可能性があることが説明された。

その他、著作権保護期間の延長問題、違法なインターネット配信からのダウンロードを抑止するため昨年改正された著作権法第30条、模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)交渉過程における著作権に関する議論の説明の後、書籍のデジタル化、配信のあり方について政府としての取り組みが紹介され、現在、経済産業省、総務省、文部科学省との連携が行われていることが示された。

■ 意見交換

説明後に行われた意見交換では、委員から、報告書の結論では、利用者側から新しい技術に対して萎縮効果があるという積極的な具体例が示されなかったこともあり、新たなビジネスに迅速に対応するためという観点があまり前に出ていない印象を受けるとの指摘があった。

これに対して永山課長からは、権利制限の一般規定の対象として想定される利用類型のなかには、現行法の解釈で解決可能なものもあるとの意見もあるが、今後の技術革新のなかで新たな利用方法が出現した場合にも適応できる類型もあるとの認識が示された。

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今後、著作権部会では、権利制限の一般規定の問題をはじめ、著作権法をめぐる議論について、文化庁を含めた、政府の議論を引き続き注視していくこととしている。

【産業技術本部】
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