日本経団連タイムス No.2986 (2010年2月25日)

欧州駐在大使との懇談会開催

−日・EU関係の現状と課題など


日本経団連は3日、東京・大手町の経団連会館で欧州駐在大使との懇談会を開催、「日・EU関係の現状と課題」「EUの動向」などについて説明を聴くとともに懇談した。日本経団連からは、御手洗冨士夫会長、渡文明、槍田松瑩、前田晃伸、西田厚聰の副会長4氏らが出席した(進行=横山進一ヨーロッパ地域委員会共同委員長)。説明概要は次のとおり。

■ 日・EU関係の現状と課題=鈴木庸一外務省経済局長

過去10年間、日・EU間の貿易・投資は順調に増加してきたが、ここに来て伸び悩んでいる。経済連携協定(EPA)に向けて、現在EUが高い関心を有する非関税分野を中心に協議を行っている。1月のEPA・WTO閣僚会合ではEUとのEPA交渉推進で一致しており、できれば本年の日・EU定期首脳協議で共同研究の開始にこぎつけたい。

■ EUの動向=小田野展丈EU代表部大使

リスボン条約発効により、いわゆる「EU大統領」「外相」に当たるポストが新設されたほか、EU版外務省が設置される。EUは自由貿易協定(FTA)交渉にも力を入れ始めており、韓国とのFTAは年内に発効する見込みである。カナダとの交渉は初の対先進国FTAであり注目される。現在、新成長戦略「EU2020」を策定中であるが、失業対策、財政赤字の解消が重要課題である。

■ 日・EU EPAに関する取り組み=神余隆博駐ドイツ大使

日・EU EPAに関する日本経団連提言をドイツ国内関係者に紹介、実現を働きかけている。肯定的な業界もあるが、日本は閉鎖的な市場とのイメージが根強く残っている。先般来日したヴェスターヴェレ独外相兼副首相が共同研究の開始に言及するなどドイツ政府は前向きな姿勢であり、ドイツ産業界の理解を得るための働きかけを、産業界同士の対話も含めて行っていく必要がある。

■ 中・東欧地域の経済情勢=竹田恆治駐ブルガリア大使

近年、中・東欧諸国はEUの成長エンジンとして比較的高い成長を遂げてきた。当初、金融市場の混乱の影響は軽微と思われたが、西欧からの資金調達が困難となり、実体経済が悪化した。経常収支の赤字や対外債務の増加など懸念材料はあるものの、IMFの融資、EU等による支援ならびに外国投資の回復等により、ペースは緩やかながら、2010年には多くの国でプラス成長に転じる見込みである。

■ ロシアの経済情勢=河野雅治駐ロシア大使

10年ぶりの財政赤字と失業率の上昇に直面するなか、国家予算の3分の1を年金の増額等の社会政策に充当して徹底的な弱者救済を実施し、2010年には3%のプラス成長に転じると予測されている。今後のロシア経済の課題は、経済の近代化、外国資本・技術の導入、汚職の追放、経済の自由化・政治の民主化が進展するか否かである。技術力の向上やエネルギー供給先の多様化、極東開発等の観点から日本への期待は大きい。

■ WTOドーハ・ラウンドの現状=北島信一在ジュネーブ代表部大使

昨年のG8ラクイラ・サミットおよびG20ピッツバーグ・サミットで合意された2010年中の妥結に向け、鋭意努力している。米国内からこれまでの成果をベースに交渉を進めることに否定的な声も上がるなか、新興国はそのような交渉姿勢に反発している。ドーハ・ラウンド交渉が妥結すれば、世界のGDP総額が年間3000億-7000億ドル増加するとの試算もあり、保護主義を抑止するためにもラウンドを貫徹する必要がある。

【国際経済本部】
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