日本経団連タイムス No.2987 (2010年3月4日)

中国地方経済懇談会を山口・宇部で開催

−新政権の政策運営と地方経済への影響めぐり意見を交換


日本経団連(御手洗冨士夫会長)と中国経済連合会(中国経連、福田督会長)は2月18日、山口県宇部市内のホテルで第38回中国地方経済懇談会を開催した。懇談会には、日本経団連から御手洗会長、副会長、評議員会副議長らが、中国経連からは福田会長をはじめ会員約230名が参加、「新たな発展へ確かな布石を−新しい国づくりと中国地方の活性化を目指して」をテーマに意見を交換した。

中国地方経済活性化目指し

あいさつする御手洗会長

開会あいさつした中国経連の福田会長は、(1)地方分権の推進と道州制の促進(2)社会基盤の整備促進(3)中国地方5県の知事と経済界の代表者が地域の諸課題を議論する場である「中国地域発展推進会議」――の3つの取り組みについて説明。そのうえで「地方の疲弊が進み元気を失っている現状を打破しなければ、この国の発展は望めない」と述べ、活力ある中国地方の実現を目指し、難局を乗り切っていくとの決意を示した。

続いてあいさつした日本経団連の御手洗会長は、日本経済は予断を許さない状況が続いており、わが国経済を一刻も早く回復させ、持続的な成長につなげていくための政策が必要との認識のもと、政府に対し、成長戦略の早期策定を働きかけた結果、新成長戦略の基本方針の取りまとめにつながったと成果を述べた。

■ 活動報告

第1部の活動報告では、日本経団連側から、大橋洋治副会長が「経営労働政策委員会報告」、佃和夫副会長が「観光立国の早期実現に向けた取り組み」、渡辺捷昭副会長が「農業の成長産業化に向けた取り組み」についてそれぞれ報告した。

一方、中国経連側からはまず、林孝介副会長が、中国地域発展推進会議とインバウンドを中心とした広域観光推進への取り組みについて報告。中国地方が一体となってインバウンド観光を推進するため、(1)PR活動(2)プロモーション活動(3)受け入れ体制の整備――を3本柱として、同推進会議のもと、一体的に取り組んでいくと説明した。

次に八村輝夫副会長が、中国地方の競争力強化に向けた社会資本整備への取り組みを説明。産業活動を支える国際物流機能の強化や広域観光の推進の観点から、(1)山陰自動車道、中国横断自動車道の早期整備による中国地方の一体的な発展に資する高規格幹線道路ネットワークの実現(2)国際競争力の強化に資する道路・港湾・空港の一体的整備――などを要望したことを報告した。

続いて末長範彦副会長が、持続可能な社会を実現するための税制抜本改革に向けた取り組みについて報告。(1)社会保障財源の確保と財政健全化(2)持続的な経済成長(3)納税の公平性・効率性(4)低炭素社会の実現(5)地方の活性化――の5つの観点からの税制改革を要望していると紹介した。

■ 意見交換

第2部の意見交換では、中国経連側から、(1)新政権の政策運営と地方経済への影響(2)新政権の地域主権戦略と地方分権・道州制の推進(3)SaaS・クラウドコンピューティング社会を見据えた情報化戦略(4)新政権の地球温暖化対策と産業界の対応(5)今後の科学技術振興政策と産学官連携の推進施策――の5点について質問があった。

これに対して日本経団連側は、(1)イノベーションや生産性向上等を通じ、新たな需要と雇用を生み出すのは企業であり、国際的な整合性に即した法人実効税率の引き下げなど、企業への政策的な後押しが必要(森田富治郎副会長)、(2)道州制の実現には、政治の強いリーダーシップとともに、地域の自発的な取り組みや国民理解の促進が不可欠。今後も道州制タスクフォースや道州制国民会議を通じて国民各層の理解を求めていく(池田弘一評議員会副議長)、(3)SaaSやクラウドコンピューティングの活用による行政の業務改革を強力に推進すべき。これにより生じた資源をよりニーズの高まっている高齢者介護や福祉などの充実に有効活用すべき(前田晃伸副会長)、(4)地球温暖化問題の解決にあたっては、国際的公平性の確保が極めて重要。中期目標を実現するための具体的な方策や国民負担についての、科学的分析に基づく透明かつ国民的な議論が必要(渡文明副会長)、(5)低炭素社会や健康長寿社会の実現に資する「課題解決型」のイノベーションを実効あるものとするため、必要となる基礎研究、技術開発、普及等に関する総合的な戦略を産学官一体で策定、推進することが必要(渡辺副会長)――と発言した。

【総務本部】
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