日本経団連タイムス No.2987 (2010年3月4日)

海洋分野の技術開発で説明聞く

−深海開発などで意見交換/海洋開発推進委員会総合部会


日本経団連は2月19日、東京・大手町の経団連会館で、海洋開発推進委員会総合部会(山脇康部会長)を開催した。当日は、海洋研究開発機構の今村努理事、平朝彦理事、堀田平執行役を招き、海洋分野の技術開発について説明を聞くとともに意見交換を行った。会合の概要は次のとおり。

■ 今村理事の説明

海洋研究開発機構の使命は、海洋立国日本の発展を科学技術によって推進することである。具体的には、地球環境問題への貢献、防災・減災への貢献、環境と生物の相互関係の解明、海洋調査・観測の技術開発の4点である。
大陸棚延伸の調査をした「かいれい」、北極を観測した「みらい」、地球深部探査船「ちきゅう」など8隻の船舶を保有している。潜水調査船「しんかい6500」、深海巡航探査機「うらしま」、大深度小型無人探査機「ABISMO」は、世界で一番性能が高い研究設備である。
現政権下では、「鳩山イニシアティブ」による地球温暖化対策など環境分野の政策が大きく関わってくる。今年6月の新成長戦略のなかで、海洋研究開発機構がどのような役割を果たせるかを模索している。

■ 平理事の説明

東南海地震の巨大プレートの震源域を世界で初めて掘る「南海トラフ地震発生帯掘削計画プロジェクト」において、昨年4月から5カ月間、「ちきゅう」は掘削を行った。巨大地震や津波の発生メカニズムの解明に向け、プレートの境界の摩擦をモニタリングしている。また、地震津波観測監視システム(DONET)のネットワークを形成し、無人探査機により海底の様子をモニタリングしている。
グリーンイノベーションへの貢献としては、八戸沖の海底下における生命圏を掘削し、二酸化炭素をメタンに変える多様なメタン生成アーキア(古細菌)の培養に成功した。海底下地層へのCO2貯留についても研究開発を行っている。
海底資源探査については、「ちきゅう」によるメタンハイドレート層の構造の解明、「うらしま」による沖縄トラフの熱水鉱床の探査、無人探査機「ハイパードルフィン」によるコバルトリッチクラストの採取を行っている。
温暖化対策については、過去10〜20年で深層海流の温度が0.005〜0.01度上昇したので、海洋観測用ブイを開発・運用している。
海洋鉱物資源ポテンシャルのロードマップを作成すれば、産業界とも協力できるだろう。マントルを目指す技術も開発したい。

■ 意見交換

「漁業権との調整が大陸棚開発のスピードを決める」との意見に対し、今村理事は「漁業と開発の共生を考えるべきである」、平理事は「1000メートルより深い海底の開発利用については比較的縛りが少ない」と答えた。
また、「日本の海洋開発は深海にプライオリティーを置くべきか」との質問に対して、平理事は「鉱物資源、石油・天然ガス、メタンハイドレートは、基本的に深海で開発する。外国の技術を取り入れ、日本独自の仕様の技術を開発すべきである」と答えた。

【産業技術本部】
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