日本経団連タイムス No.2988 (2010年3月11日)

低炭素技術が牽引する経済成長のあり方など

−製品評価技術基盤機構の安井理事長と意見交換/環境安全委員会


政府は昨年12月、「新成長戦略」(基本方針)を閣議決定し、6つの戦略分野の1つとして「グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略」を位置付けた。環境問題への取り組みの強化によって新たな需要を創造し、経済の発展や雇用の確保に結び付けることが期待される。
そこで、日本経団連の環境安全委員会(坂根正弘委員長)では4日、東京・大手町の経団連会館で会合を開き、低炭素技術が牽引する経済成長のあり方などについて、製品評価技術基盤機構の安井至理事長と意見交換を行った。安井理事長の説明概要は次のとおり。

■ 中期目標と長期目標を検討する際のポイント

2020年までの中期目標については、既存のすべての技術を組み合わせるよりほかはない。他方、2050年を見据えたとき、(1)技術的な進歩(2)市民社会の価値観の変化――という、より広範な視点から検討することが重要となる。
90年比15%削減の中期目標であれば、供給側・省エネ側双方が各々11%削減することで、数字上は目標達成可能であるが、90年比25%削減の場合、双方で各々17%削減が求められ、相当厳しい。
供給側のエネルギー使用量を11%削減するためには、4500万kl相当の再生可能エネルギーを導入する必要がある。また、原子力発電の稼働率の画期的な改善が望まれる。
さらに、日本のエネルギー自給率が4%程度にすぎないという現状を十分認識し、今後、自然エネルギーの導入を図る必要がある。

■ 再生可能エネルギー推進策など

家庭部門では、再生可能エネルギーの買取制度のもとでの国民負担など、覚悟を決めて取り組んでいくしかない。また、例えば非電気自動車への課金など、電気自動車(EV)を推進する社会システムを構築すべきである。加えて、革新技術を開発するため、国の投資が必要である。

■ 2050年新コタツ文明

2050年の目標達成は2020年のそれよりもさらに難しく、省エネ技術に加え、同じサービス量を得るための満足量を低く抑えることが必要となる。これを「新コタツ文明」と呼びたい。
セントラルヒーティングは、人がいてもいなくても暖房を提供するが、満足度を一定にするためには、必要なとき必要な量だけサービスを提供するコタツが最適である。
また、2人乗りEVを一人一台保有しつつ、一家団欒で出かけるときにはEVを連結してはどうか。最先端技術で発電した電力を送ることによって、長距離走行が可能となろう。ただし、EVのバッテリーは、高価で寿命が短いため、適切に導入しなければ、車が走らないという問題が顕在化しかねない。リチウム電池の寿命が伸びず、高級車需要が減少すれば、亡国型技術になりかねない。
日本としては、他国にまねされにくい素材産業の国際競争力を維持、強化していくことが重要である。また、社会インフラについては、常に国際規格を意識し、省エネ技術の移転をビジネスチャンスとすべきである。

【環境本部】
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