日本経団連タイムス No.2989 (2010年3月18日)

提言「『イノベーション立国』に向けた今後の知財政策・制度のあり方」を発表

−「イノベーション立国」推進へ方策と政策・制度の方向性示す


日本経団連は8日、政府における知的財産推進計画や新成長戦略の工程表の今年6月の策定を見据え、「『イノベーション立国』に向けた今後の知財政策・制度のあり方」を公表した。
提言のポイントは次のとおり。

1.「イノベーション立国」に向けた「イノベーション・ハブ」構想の実現

わが国の持続的な発展、国民生活向上のカギはイノベーションにある。わが国は、イノベーションによって成長・発展し国民がその成果を享受する「イノベーション立国」を目指し、企業を中心とするイノベーションの主役が集う、世界における「イノベーション・ハブ」となるべきである。

とりわけ、企業がイノベーションの潜在力を発揮する観点から、(1)産業界のイニシアティブにより、イノベーション関連政策が立案・実行されること(2)政府によって知の発見や技術の革新の入口から市場創造・展開の出口まで一貫した総合的イノベーション政策が推進されること(3)日本の優位性を活かしつつ国内外の課題の解決に貢献することで、わが国自体が魅力的になり内外の英知を集める誘因力を持つこと――が極めて重要である。

2.イノベーション立国に向けた知財政策・制度のあり方

(1)基本的考え方

知財政策・制度は、企業の潜在力を活かすインフラとして、総合的イノベーション政策の重要な構成要素である。イノベーション創出の観点から、守るべき権利はしっかり守ることを基本としつつ、(1)企業戦略によって「競争」「協調」が選べる政策・制度の構築(2)各種連携を考えるうえで障害となる国内政策・制度の是正(3)新興国等において障害となる政策・制度の是正や望ましい政策・制度の構築への協力(4)各国を巻き込む魅力ある新しい枠組みの提案――等を通じて、創造力の強化と実現・普及の加速があわせて達成されるよう改革を推進すべきである。

(2)創造力の強化に向けた施策

知の集約を円滑化するため、わが国特有の職務発明規定(特許法第35条)の再改定に向けて法人帰属を始め、本質的な検討を行うべきである。また、出口を意識した産学官連携の推進に向け、企業と大学が共同研究を行う際の知財権の取り扱いの問題や、大学におけるTLO(技術移転機関)の活動のあり方等の検討を深めるべきである。

(3)実現・普及に向けた施策

知を広く安心して使えるようにするため、まず、国内展開を念頭に、営業秘密に関する刑事訴訟手続きのあり方について、裁判の公開原則と調和した具体的な対策の早期取りまとめや、技術的専門性の高い法曹人材の育成強化等が重要である。また、海外市場での実現・普及の加速に向け、官民一体となった市場開拓や諸外国のルール・運用の共通化等を推進するため、官民一体での国際標準化の推進、世界共通特許制度実現に向けたアジア共通特許制度の検討、ACTA(模倣品・海賊版拡散防止条約)の早期締結等が求められる。さらに、10月にわが国において開催予定の第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)への対応や、地球温暖化対策等に資する環境技術の移転に関する民間発想の新メカニズムの構築に向けた検討も必要である。

【産業技術本部】
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