日本経団連タイムス No.2990 (2010年3月25日)

住生活向上につながる成長戦略求め提言

−社会インフラとしての良質な住宅ストックの形成を求める


日本経団連は16日、政府の新成長戦略に対応して、提言「住生活の向上につながる成長戦略を求める」を公表した。
提言の概要は次のとおり。

■ 住宅市場の現状と目指すべき方向

2009年の新築住宅着工件数は、78万戸と45年前の水準になるなど、住宅市場は大きく落ち込んでいる。住宅投資は内需の柱であり、裾野の広い関連産業を含め経済や雇用に大きな波及効果がある。厳しい経済状況を一刻も早く打開するため、政府は住宅市場の動向を見極めつつ、適時的確な措置を講じる必要がある。

他方、住宅は人々が日々の生活を営み、良好な街並みや地域コミュニティーを形づくる社会的資産である。わが国の住宅は量的には満たされているものの、質の面では国民が求める水準まで達していない。また、環境問題、少子・高齢化、安全・安心の確保といった課題に対して、住宅の省エネ化、バリアフリー化、耐震化の推進を通じて貢献できる面は大変大きい。

■ 早急に対策を講ずるべき課題

足元の厳しい住宅市場を早期に回復させるためには、予算、税制、規制緩和といった方策を総動員する必要がある。

昨年末、政府が打ち出した住宅版エコポイント制度、住宅ローン「フラット35S」の金利引き下げ幅の拡大、住宅取得等資金の贈与に係る非課税枠の拡大は、住宅市場の起爆剤として期待されている。ただ、いずれも短期間の時限措置となっている。景気の底割れを起こすことのないよう、適用期限を延長すべきである。また、新築住宅に係る固定資産税の減額措置については、政府が見直しを検討しているが、住宅の取得・保有の負担軽減に長年貢献してきた経緯を踏まえ、恒久化すべきである。

規制緩和に関しては、現在、政府が建築基準法の見直し作業を進めている。同法のもとで、住宅建設の際の申請や審査には多くの手間や時間がかかっており、早期の実効ある見直しを期待したい。

さらに、地球や人に優しい住まいの普及には、住宅の省エネ化、バリアフリー化を促すための、周辺機器も含めた補助制度や税制支援が求められる。

■ 中長期的に解決すべき課題

中長期にわたって優良な住宅ストックの形成や循環を進めるためには、その下支えとなる政府の安定的な支援制度が欠かせない。住宅ローン減税や住宅投資減税を継続、拡充するとともに、各種の住宅取得支援税制自体を恒久化すべきである。

現政権が重点施策の一つに掲げる既存住宅市場の活性化に向けては、まずは数多くの優良な住宅ストックを蓄積し、それを循環させることが重要である。

環境性能、耐震性、高齢化対応などに優れたわが国の住宅を広く海外に浸透できれば、相手国の住宅の質の向上やわが国住宅産業自体の成長にもつながる。海外での事業展開を阻害する各国の規制や政策の改善に向けて、政府を挙げた支援が求められる。

【産業政策本部】
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