日本経団連タイムス No.2992 (2010年4月8日)

シンポジウム「低炭素社会の実現に向けた産業界の取り組み」を開催

−技術面、製品面からの温暖化対策の紹介など/経済広報センター


日本経団連と経済広報センター(御手洗冨士夫会長)は共催で3月23日、東京・大手町の経団連会館でシンポジウム「低炭素社会の実現に向けた産業界の取り組み」を開催した。国会議員、一般参加者、企業・団体の環境担当者ら約300名が参加した。

シンポジウムでのパネル討論

冒頭、主催者を代表してあいさつに立った坂根正弘日本経団連環境安全委員長は、「産業界は今や世界一の効率を達成している。しかし、政府の新たなCO2排出量削減目標はかなり厳しい数値で、その達成は産業界の努力だけでは難しく、全国民の協力や努力が必要だ。政策面では、われわれの意見にも耳を傾けてもらい、CO2削減努力がビジネスとして成り立ち、企業が画期的な技術開発に取り組める、世界に誇れる仕組みづくりをお願いしたい。排出量取引制度は慎重に考えるべきだ」と述べた。

続いて、藤沢久美シンクタンク・ソフィアバンク副代表が、「低炭素社会の実現に向けた産業界の取り組みへの期待」と題し基調講演を行った。藤沢氏は、「産業界だけを厳しく規制するだけでは地球温暖化問題は解決しない。排出量取引制度によって、生産活動やCO2削減に向けた技術開発が阻害されれば、企業は海外に出てしまう懸念がある。それよりも優れた技術・能力を問題解決につなげていく取り組みが重要だ。官民政が一緒になって、世界を元気にするビジネスの姿を実現してほしい。その意味で、地球温暖化問題は、日本における新しい国のかたち、産業・企業、国民づくりの大きなチャンスだと思う」と述べた。

引き続き、藤沢氏を進行役にパネルディスカッションが行われた。パネリストには、渡邊広志・電気事業連合会立地環境部長、吉清元造・日本化学工業協会技術部長、足立仁・日本ガス協会環境部長、圓山博嗣・日本自動車工業会温暖化対策検討会主査、山田健司・日本鉄鋼連盟地球環境委員長、椋田哲史・日本経団連常務理事が出席した。

パネルディスカッションの前半では、各産業における技術面、製品面からの温暖化対策への取り組みが紹介された。

電力業界は、石炭ガス化複合発電やCO2回収・貯留技術の開発、ヒートポンプの普及拡大。都市ガス業界は、天然ガスへの転換と高度利用および家庭用燃料電池の普及・技術開発。鉄鋼業界は、製造工程のさらなる効率化、低炭素社会に不可欠な高機能鋼材の供給、技術の海外移転。自動車業界は次世代型自動車の開発および政府、燃料メーカー、ユーザーなどを巻き込んだ取り組み。化学業界は、製品のライフサイクル全体でのCO2排出削減という視点の重要性について指摘した。また、各パネリストとも、今後も引き続き最先端の技術を活用して温暖化対策を進めていくことを表明した。

後半は、政府への要望などが話し合われた。政府に対しては「温暖化対策は、企業・国民生活に大きな影響を与える。透明で開かれた議論をしてほしい」「既にエネルギー効率の高い日本で排出量取引制度や環境税を導入することは、かえって国益を損なう」「産業・企業の活力を抑制するような政策ではなく、がんばろうとする産業・企業をサポートする政策を求めたい」などの意見が出された。

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