日本経団連タイムス No.2993 (2010年4月15日)

エネルギー基本計画見直しの骨子案について説明を聞く

−エネルギー安全保障の確保など/資源エネルギー庁・笹路エネルギー情報企画室長から


政府の総合資源エネルギー調査会では、総合部会の下に基本計画委員会を設置し、現行のエネルギー基本計画の見直しに向けた検討を進めている。第2回基本計画委員会(3月24日開催)では、基本計画見直しの骨子案として「今後の資源エネルギー政策の基本的方向について」を取りまとめ、パブリックコメントに付した。

そこで、日本経団連は2日、東京・大手町の経団連会館に資源エネルギー庁の笹路健エネルギー情報企画室長を招き、エネルギー基本計画見直しの骨子案について説明を聞くとともに懇談した。笹路室長の説明概要は次のとおり。

■ エネルギー安全保障の確保

資源小国であるわが国にとって、エネルギー安全保障は国民生活・経済活動の根幹を支える重要課題であり、これを官民挙げて確保することがエネルギー政策の基本となる。エネルギー安全保障の確立のためには、(1)自給率の向上(2)省エネルギー(3)エネルギー源多様化・供給源の多様化(4)サプライチェーンの維持・強化(5)緊急時対応力の確保――という5つの要素が総合的に確保される必要がある。

■ エネルギー供給構造

安定供給、環境適合、経済性を達成する観点から、電源のベストミックスが引き続き重要である。

特に原子力発電は、供給安定性と経済性に優れた準国産エネルギーであり、発電過程でCO2を排出しない低炭素電源の中核として、わが国の中長期的な基幹電源を担う。安全の確保を大前提とし、国民の理解と信頼を得ながら、新増設の着実な推進と設備利用率の向上を図るべきである。

■ エネルギー需要構造

産業部門においては、省エネ法の運用強化、革新的技術の実用化、高効率設備による燃料転換、コジェネレーションの利用の推進、最先端技術の設備更新時における導入などにより、世界最高レベルの省エネ水準の維持・強化を図る。

■ エネルギーを基軸とした成長戦略

エネルギー分野は、国内では、(1)分散型電源の普及、住宅や建築物のネット・ゼロ・エネルギー化の推進、電気自動車等の次世代自動車の普及、スマートグリッドの構築などへの投資(2)地域や都市での低炭素エネルギーインフラの導入などにより社会構造変革を促すための投資――などが期待され、わが国の将来の内需の中心的役割の一翼を担うものと考えられる。

一方、海外でもアジア地域を中心に、原子力発電所・高効率火力発電所やスマートコミュニティーの建設など、国内とほぼ同様の投資が見込まれている。このため、省エネ製品やスマートエネルギーシステム、原子力・石炭火力発電技術の輸出などにより、これらの国の内需を積極的に取り込んでいくことが期待される。

中長期的なエネルギー分野の成長戦略という観点からは、国内でエネルギー産業構造の変革を積極的に推進し、雇用の確保を図るとともに、競争力あるエネルギー産業の海外展開の促進により、わが国の経済成長の確保と海外におけるCO2削減の同時達成を図ることが求められる。

【環境本部】
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