日本経団連タイムス No.2993 (2010年4月15日)

「環境激変下を生き抜く中小企業の組織づくり」テーマに説明を聞く

−予測不能時代への対応など/中小企業委員会


日本経団連は2日、東京・大手町の経団連会館で中小企業委員会(澤部肇委員長)を開催し、日本政策金融公庫総合研究所の川楠誠司主任研究員から、「環境激変下を生き抜く中小企業の組織づくり」について説明を聞いた。概要は次のとおり。

■ 予測不能な時代の到来

米国のサブプライム・ローン問題をきっかけとする景気の急激な減速など、最近の環境変化はスピードが速く、原因が複雑で、波及効果が大きいという3つの特徴がある。経済のグローバル化、IT化、急激な技術革新などが、今後ますます加速するとみられるなか、企業にとっては予測不能な環境激変の時代が到来したといえる。

経営環境の変化が当たり前となった時代では、規模の大小ではなく、環境適応力を身につけた「進化した企業」が生き残ると考えられる。企業が競争力を維持し、持続的な発展を遂げていくためには、事業環境の変化に適応しながら、最善の戦略を選択していくことが重要である。

■ 「進化した企業」を目指す

「進化した企業」となるには、過去の成功体験にこだわらず、潜在的なニーズの調査や細やかなサービスの導入、既存事業の見直しといった取り組みが不可欠である。その方向性としては、(1)得意なノウハウに磨きをかけ、経営資源を集中する「深化」(2)既存の顧客が抱くニーズに広く応え、事業内容を周辺市場にまで拡大する「伸化」(3)ノウハウにとらわれず新市場に進出したり、新市場を創造したりする「新化」――の3つの「シンカ」がある。どこに向かうとしても、組織が一丸となって取り組む必要がある。

■ 進化に向けた組織づくり

従業員の多様なニーズをまとめ、組織を強化するには、5つのポイントがある。1点目は「シンカ」の方向を「定める」ことである。方向を定めたら、ぶれないことが重要である。2点目は、方向を「示す」ことである。その際、従業員が共感・共有するよう、ねらいや背景を丁寧に説明する必要がある。3点目は、経営者自身が率先して意識改革を「推進する」ことである。従業員が自ら動き、成功体験を味わえるような仕組みを取り入れることが必要である。4点目は社内を「整備する」こと、5点目は従業員を「育てる」ことである。常に高い目標を示すとともに、年の近い先輩社員が公私にわたって若手の面倒をみる「ブラザー制度」を導入するなど、職場環境に気を配ることが必要である。

従業員と経営者の距離が近い中小企業では、大手企業ではできないことでも、工夫次第でできることがある。中小企業は環境変化の影響を受けやすいが、変化を脅威ではなく、組織を強化し、進化する機会としてとらえ、立ち向かっていくことが必要である。

【労働政策本部】
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