日本経団連タイムス No.2993 (2010年4月15日)

集団的消費者被害救済制度

−消費者庁研究会での検討状況を聞く/経済法規委員会消費者法部会


日本経団連は5日、東京・大手町の経団連会館で経済法規委員会消費者法部会(松木和道部会長代行)を開催し、消費者庁企画課の西川康一企画官から消費者庁の「集団的消費者被害救済制度研究会」(以下、研究会)における検討状況について説明を聞くとともに、意見交換を行った。西川企画官の説明概要は次のとおり。

■ 経緯

少額同種の消費者被害では、費用、労力の面で、個々の消費者が自ら訴えを提起して被害回復を図ることを断念しがちであり、その結果、加害者に不当な利益が残りやすくなっている。このため、昨年成立した「消費者庁及び消費者委員会設置法」の附則において、法施行後3年(2012年9月)を目途として、加害者の財産保全に関する制度を含め、不当な収益を剥奪し、被害者を救済するための制度について検討を加え、必要な措置を講ずるものとされた。現在、研究会で検討を行っており、今年夏に救済制度の考えられる選択肢の提示および論点の整理を示した報告書を作成する予定であり、その後、来夏を目途に制度の詳細を含めた結論を得る予定となっている。

■ 主な論点

研究会では、加害者の財産保全についての検討、海外制度の検討および集合訴訟に関する論点整理等を行っている。集合訴訟は大きく分ければオプト・イン型(授権ないし届出をした対象消費者のみに判決効が及ぶ手続き)、米国のクラス・アクションのようなオプト・アウト型(除外の届出をした者を除くすべての対象消費者に判決効が及ぶ手続き)、二段階型(共通争点について集合的に審理し、個々の権利者の損害賠償額等の個別争点についての判断を分ける手続き)等に類型化できるが、いずれも長所・短所がある。例えばオプト・イン型については既存の訴訟手続との親和性が高い一方、現行制度と比較した場合のメリットが特段見出しにくい。他方、オプト・アウト型については幅広い救済、違法行為の抑制、紛争の一回的解決に資する半面、個々の消費者からの授権なく何故に訴訟追行者が訴訟を追行できるのかという問題、訴訟に敗訴した場合の個々の消費者の手続保障の問題等がある。

■ 今後の課題

消費者被害の類型はさまざまであり、すべての被害に対応できる唯一万能の制度は存在せず、消費者被害の定義等を含め詰めるべき論点が多く残されている。いずれにせよ、救済制度は、関係者にとって活用可能であり、なおかつ企業にとっても濫用が防止され、企業活動を萎縮しないような現実的な制度にしなければならず、研究会では諸外国の例も参照しつつ、幅広い観点から緻密な検討を行っていきたい。

【経済基盤本部】
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