日本経団連タイムス No.2995 (2010年4月29日)

「食・農に関するセミナー」開催

−政府の最新施策を紹介/農商工連携に取り組む企業事例も


日本経団連は16日、東京・大手町の経団連会館で「食・農に関するセミナー」を開催した。同セミナーは、不安定さを増す世界の食料需給や国内の食料生産基盤の脆弱化などを背景に国民的な関心が高まっている食料や農業に関する問題について、日本経団連の取り組みを紹介するもの。同時に、政府の考え方や最新の施策、国民・市場のニーズに応えて新たな需要を生み出す企業の取り組みを紹介することで、食と農に関連する産業のさらなる発展を図ることを目的としている。セミナーには日本経団連の会員企業や食品・農業関連企業などから約300名が参加した。セミナー終了後には、名刺交換・交流会が開催され、講師と参加者、参加者同士の交流が行われた。

参加者同士の交流も

セミナーではまず、日本経団連農政問題委員会の小林栄三共同委員長が食料・農業問題に関する日本経団連の取り組みを説明。

小林氏は、「わが国の総合的な食料供給力強化に向けた提言」(2009年3月)、「新たな食料・農業・農村基本計画に望む」(2010年2月)等の政策提言活動やJAグループとの共催による農商工連携セミナー(2009年10月)をはじめとする農業界との連携・協力の推進などの取り組みを紹介。これらが政府の施策や農業界の取り組みにも反映されてきたとし、今後とも多くの企業の協力を得て、取り組みを強化していきたいと述べた。

続いて、農林水産省の新井ゆたか総合食料局食品産業企画課長が「食品産業の将来展望と食農連携の推進」、経済産業省の滝本徹地域経済産業政策課長が「農商工連携の推進」をテーマに講演した。

新井氏は、食品関連産業の将来展望や今年3月に閣議決定された新たな食料・農業・農村基本計画のポイント、特に同計画の大きな柱の1つとして位置付けられている農業と2次・3次産業との融合により農業・農村の振興を図る「農業の6次産業化」の考え方を説明。企業と生産者団体等が連携して耕作放棄地解消などに取り組む事例なども紹介し、農業・農村を活性化する多様な連携軸のなかで企業が果たす役割に強い期待を示した。

滝本氏は、農商工連携の推進の意義として、地域の基幹産業である農林水産業や食品産業の新たな市場の開拓、加工、外食、観光などで高付加価値化することが地域経済の活性化に直結すると説明。あわせて、優良事例に見る農商工連携の進め方のポイント、政府の関連事業の内容、農産物・食・植物工場の海外展開に向けた政府の支援策を紹介した。また今後、農業の成長産業化を図るため、競争力の強化と新規需要の開拓、プロ経営者の育成と新規参入の促進という2つの観点から戦略的に施策を展開し、産業構造の再編を促進する必要があるとの認識を示した。

■ 2社の事例を紹介

次に「らでぃっしゅぼーや」と「カゴメ」の2社の取り組み事例を紹介。

らでぃっしゅぼーやの緒方大助社長は、商品企画から生産、仕入れ、配送まで一貫したマネジメントにより、有機・低農薬野菜と無添加食品の会員制宅配ネットワークを展開している同社の事業を説明。全国の生産者との生産技術向上の取り組みや生産者のモチベーションを保つための仕組み、消費者との信頼関係の構築など、同社のビジネスモデルを支えるさまざまな工夫を紹介した。

カゴメの佐野泰三常務執行役員は3世紀にわたるカゴメのトマト栽培の歴史のなかで現在カゴメが取り組んでいる生鮮トマト事業の現状を説明。同社の取り組みとして、生鮮トマトの付加価値向上に向けたハイテク農業の推進や大手販売店への直納、積極的なメニュー提案などを紹介。今後農業が自立した産業となるための課題として、省エネ技術の開発や国際競争力強化に向けた食と農に関する産業集積拠点の創出の必要性を指摘した。

らでぃっしゅぼーや・緒方社長
カゴメ・佐野常務執行役員

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日本経団連では、引き続き、食と農に関わる産業振興への取り組みを強化することとしており、関連企業の積極的な参画を呼びかけている。

【総務本部】
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