日本経団連タイムス No.2995 (2010年4月29日)

「民主党には対話と要求を」

−「今後の政策課題と政党の役割」御厨東京大学教授が常任理事会で講演


日本経団連が7日に開催した常任理事会で、東京大学先端科学技術研究センターの御厨貴教授が「今後の政策課題と政党の役割」をテーマに講演した。
講演の概要は次のとおり。

鳩山政権の発足から半年が経つ。この間に事業仕分けやダム建設等を「止める」ことはしているが、新たに「つくる」ことまではできていない。「つくる」ためには国・地方の官僚組織を動かさなければならない。自民党は、政権の座にいた半世紀の間に官僚組織を動かすための暗黙知を豊富に蓄積し、派閥間での熾烈な競争と党内での疑似政権交代を繰り返すことで政権を維持してきた。しかし、時代が変わってこのシステムが機能しなくなった。昨年の衆議院議員選挙で民主党が大勝したのは、国民の「自民党的なもの」に対する嫌悪感によるものである。

政権交代で暗黙知が引き継がれなかったので、民主党はゼロから暗黙知を蓄えようとしている。こうした状況のなかでも、強いリーダーシップを持った首相が各施策に優先順位をつけて工程表を示していれば、国民にとってわかりやすかったはずだ。私は鳩山政権の発足直後に「優先順位をつけて、年内に達成する目標を決めるべきだ」と述べたが、この考えは届かなかったようだ。

昨年は「自民党が駄目ならば民主党に任せればいい」という構図を描くことができた。しかし、55年体制に嫌気がさして民主党に政権を託した国民も、いまや民主党に対する期待を失いつつある。

鳩山政権の発足直後には、民主党による改革が進んだ時に「改革疲れ」が出て停滞することを懸念していた。しかし実際には、改革は進まずに混乱と不安定さが目につくようになってきた。民主党とは何かが見えない状態となっている。そのなかでも民主党が唯一守ろうとしているのは、現実的とは言えないマニフェストである。これに対して、自民党は野党であることに慣れておらず、声高に主張したり足を引っ張ったりしているだけである。

今年の参議院議員選挙で国民がどの党に主体的に投票するか、が大きな問題となる。昨年の衆議院議員選挙で民主党に投票した人は、参議院選挙で民主党について判断してほしい。投票を棄権するのが一番良くない。少ない選択肢のなかでどうするかを考え、積極的に投票すべきだ。

衆議院で300以上の議席を持つ民主党が崩壊する可能性は少ない。民主党を突き放しても、他の選択肢は生まれない。民主党に行動をさせるために働きかけ、民主党が動けるようにさまざまな要求を行うことが必要である。

【総務本部】
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