日本経団連タイムス No.2996 (2010年5月13日)

横浜市と協力して連携授業を実施

−教育問題委員会教育と企業の連携推進ワーキング・グループ


横浜市内の中学校での連携授業の様子

日本経団連の教育問題委員会教育と企業の連携推進ワーキング・グループでは、企業の教育支援の現状や教育支援を取り巻く環境を把握するとともに、教育界、自治体に呼びかけて、企業との効果的な連携のあり方を検討している。その一環として昨年4月から1年間、横浜市教育委員会の協力などを得て、同市内の小中学校3校を対象に、連携授業を試行した。

同ワーキング・グループでは、試行に際し、今後、全国に横展開していく際の参考とするため、授業の評価に関するアンケート調査を行った。その結果、どの連携授業も児童・生徒や教師、見学者から概ね高い評価を得た。

市立美しが丘中学校で実施したクレジット・カード決済の仕組みに関する授業については、授業を受けた生徒の6割が「わかりやすかった」と回答し、カード利用の疑似体験をするなどの体験型の授業展開については9割の生徒が「良かった」と回答した。市立藤の木中学校では、環境とキャリア教育をテーマに9社の協力を得て2回にわたり、連携授業を実施した。環境教育については、体験型授業に対する生徒の評価は高かったが、教師からは授業の内容や生徒に対する話し方・用語の選択が、子どもたちにはやや難しかったのではないか、との指摘があった。またキャリア教育については、生徒からは「エンジニアが人の役に立つ仕事をしていることがわかった」など評価する感想が多かったが、教師からは「仕事上のつらいこと」や「仕事の失敗例」などネガティブな情報についても話してほしかったとの感想も聞かれた。市立文庫小学校で実施した水質管理に関する授業では、水質管理の仕事や化学物質管理についてわかりやすく説明した授業に対して、7割の児童が自分の将来や進路を考えるうえで参考になったと回答した。

このように、横浜市で試行した連携授業は概ね高い評価を得たが、今後、連携授業をさらに推進していくうえでは、次のような課題があると考えられる。

第一に、企業と教育現場をつなぐコーディネーターの必要性である。全国的にも校内に教育支援コーディネーターを配備している学校はまだ少なく、各自治体は、NPOや企業関係者、行政関係者などのコーディネーターを適切に組み合わせて活用し、個々の学校を支援することが求められる。第二に、教育界は、成功事例を教育委員会や都道府県単位で学校や教師に周知し、より多くの学校で連携授業が行われるようにしていくことが必要である。第三に、企業には、自社の支援プログラムを新学習指導要領に準拠したものにするとともに、社員が子どもの授業を見学することや、学校行事に参加することを推奨していくことが求められる。

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同ワーキング・グループでは、今後も外部コーディネーターの支援を得ながら、横浜市や他の地域からの要望に応じて連携授業を実施する予定であり、会員企業の連携授業への積極的な協力をお願いしたい。

【社会広報本部】
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