日本経団連タイムス No.2997 (2010年5月20日)

日中韓産官学FTA第1回研究会を開催

−佐藤経済連携推進委員会企画部会長が参加


日中韓産官学FTA第1回研究会が6、7の両日、韓国外交通商部(ソウル)で開催された。2009年10月の日中韓首脳会議(タイ・ホアヒン)において、日中韓自由貿易協定の産官学共同研究の開始が合意されたことを受けたものであり、日本経団連からは、佐藤芳明経済連携推進委員会企画部会長が日本交渉団に参加、産業界を代表して、日中韓FTAのあり方に関するプレゼンテーションを行った。

■ 佐藤部会長発言概要

東アジア地域の貿易投資を活性化するためには、将来的にFTAAP(Free Trade Area of the Asia-Pacific)規模の広がりを持つ経済統合を実現することも視野に入れつつ、EPA、FTAによってカバーされない空白地帯を解消する必要がある。この点は、今年3月のアジア・ビジネス・サミット等の場で確認されている。このような観点から、物品貿易、サービス貿易、投資、人の移動、知的財産権、ビジネス環境整備、原産地規則、国際標準の策定等を含む包括的な日中韓FTAの締結に向けた産官学共同研究は、極めて重要である。

日中韓FTAをWTOに整合的なものとするためには、物品貿易に関して、「実質的なすべての貿易の自由化」(GATT第24条8項)を実現する必要があり、鉄鋼製品、自動車部品、電気・電子機器等に関する早期の関税の引き下げ・撤廃が求められる。

サービス貿易に関しては、越境取引のみならず、他の当事国における拠点設置を通じたサービスの提供を必ずFTAの対象とする必要がある。とりわけ、外資制限を撤廃し、日中韓における金融、流通、製造関連サービス部門の活性化を図ることが重要である。

投資促進は、国内雇用の創出、新たなビジネス・モデルや技術導入の契機となる。そこで、日中韓でハイレベルな投資ルールを整備すべきである。送金の自由等の投資保護のみならず、投資許可段階での内国民待遇・最恵国待遇の付与やパフォーマンス要求の禁止等のルール化を目指して交渉を進めるべきである。

サービス貿易や投資の自由化が約束されても、国内法の運用の透明化、行政手続きの公正さ、行政サービスの迅速さ等、現地のビジネス環境が整備されない限り、経済活動は活性化されない。そこで、当事国同士の官民による継続的な協議というビジネス環境整備委員会の枠組みを日中韓FTAのもとに設置すべきである。

■ 各国の発言

中国政府からは、報告書の取りまとめに向け、産官学共同研究を精力的に進めるべきとの発言があった。また、これまでに同国が締結したEPA、FTAがWTOに整合的である点を強調した。

韓国政府は、農産品をはじめとするセンシティブ品目に対する配慮が必要であること、また韓国の産業界は、商慣行を含むビジネス環境の改善が課題であることを主張した。

■ 今後の予定

今回の研究会の概要は、日中韓首脳会議(5月29・30日、韓国・済州島)の場で報告される。今後、研究会を重ね、テーマ別に議論を深めたうえで、2012年中をめどに最終報告書が取りまとめられる予定である。

【国際協力本部】
Copyright © Nippon Keidanren